俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

女王蜂

2014-11-08 10:17:20 | Weblog
 女王蜂・・・どことなく淫靡な響きがある。黒のツナギを着て鞭を持ったSMの女王様を連想させるし、多くの男性を顎で使う女帝のイメージもある。しかしこの名称と実態は余りにも懸け離れている。女王蜂の仕事とは毎日卵を1,000個近く産み続けることだ。メンバーを統括する訳ではなく只管産み続けるだけの言わば産む機械のようなものだ。生物学では生殖虫と呼ばれているそうだ。
 王蜂も名とは裏腹に限りなく惨めな存在だ。交尾したら用済みになる。それも性器が千切れて死ぬという悲惨な最期だ。
 自然界に地位は無い。役割分担があるだけだ。女王蜂も王蜂も特権階級ではなく単に繁殖という役割を担うだけだ。
 犬や猿の群れにもボスはいる。しかしボスほど危険な役割は無い。外敵と戦う時には先頭に立つから死傷する可能性は最も高い。動物界ではノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)が守られている。
 それと比べて人間界は醜い。本来、役割である筈のことがすぐに権力構造に変わる。マスコミは立法・行政・司法に次ぐ第4の権力と言われることがあり、自らもそれを信じて驕りたかぶる。そんな誤解をしているから朝日新聞のように批判を許さずに嘘に嘘を重ねるような愚行を犯す。立法・行政・司法も権力ではなく役割に過ぎない。ただの公僕だ。だから謙虚に庶民の声を聞かねばならない。
 経営者と労働者も主従関係ではない。買う側は決して売る側に対して優越的地位にいる訳ではない。マケドニアのアレクサンダー大王は常に最前線で戦ったが現代の権力者は手を汚そうとさえしない。
 人間界でのみ役割がすぐに権力に変質する。政治家という金食い虫に好きなようにやらせていればこの国は変な方向へと進む一方だ。女王蜂を生殖虫と呼び変えるだけで印象は激変する。人間界のボス猿にも新しいネーミングが必要だろう。

再雇用

2014-11-08 09:43:31 | Weblog
 高齢者雇用安定法は、希望者全員を65歳まで雇用することを企業に義務付けている。これは悪法だ。年金制度の失敗の尻拭いを企業に押し付けることを狙ったものに過ぎない。こんな制度を突然押し付けられた企業は被害者意識を持つから、再雇用者対策としての追い出し部屋のようなものまで作られる始末だ。
 私の元勤務先の高齢者雇用制度はこうなっていた。56歳で役職を解かれる。これは昔の55歳定年制の名残であり給料は3割ほど削減される。60歳が定年で再雇用の条件は時給1,000円で月間最長100時間勤務、つまり上限10万円だ。再雇用者は、従来アルバイト従業員が担っていた補助的業務を担当する。
 それなりの企業に勤めて普通に生活していれば、生涯のために必要な資金は定年までに蓄えられる筈だ。だから半数以上が再雇用を希望しない。本来、若年層や主婦が担う筈の低賃金労働が、高齢者の暇潰しのために使われることになる。
 年中アルバイトを雇っている企業であればこの程度の見直しで済むがそうでない企業では再雇用者のための雑用をわざわざ作らねばならない。それを避けるためにとんでもないことが行われている。中途退職への勧誘だ。なまじ定年まで勤めさせれば更に5年間雇用しなければならない。だからそれまでに退職させてしまおうというあくどい戦法だ。これによって終身雇用制度が崩壊しつつある。高齢者の雇用の安定のために作られた筈の法律のせいで却って高齢失業者が増えるとは何とも皮肉な話だ。
 こんなことになるのは希望者全員の雇用を義務付けるからだ。一生はレースに似ていて、スタート地点よりもゴールでの差のほうが遥かに大きくなる。高齢者は肉体的にも精神的にも個人差が非常に大きい。このことを無視して全員の雇用を義務付ければ最低レベルに合わせた雇用条件に収斂する。
 中日ドラゴンズの山本昌投手が契約更改をして、来年には50歳を迎える現役投手が誕生した。これは素晴らしいことであり、私も大いに期待している。しかしこれは例外だ。誰にでもできることではない。仮にプロ野球選手の雇用の安定のためとして全員の50歳までの雇用が義務付けられたらどうなるだろうか。間違いなくプロ野球は崩壊する。使い物にならない選手ばかりが溢れ返って、その煽りで優秀な選手の給料は極端に抑えられるから良い選手が集まらなくなる。政府がおかしな法律を作る度にこの国の社会は歪められる。マラソンのゴールを突然変えるような馬鹿な政策はやめて貰いたいものだ。