俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

農業振興

2015-11-01 10:24:05 | Weblog
 大半の延命策は無駄だ。最悪は意識不明状態でのチューブ巻きだ。意識は不明ではなく「無い」状態だろう。これは死体の冷凍保存のようなものだ。回復の可能性がある時のみ延命策は有効であり、回復の見込みの無い人に対する延命策は本人にとっては苦痛の継続にしかならないだろう。
 TPP関連でまたぞろ農業支援の話が出始めた。農業を守ることに異存は無い。しかし既に仮死状態である農家まで守る必要などあるまい。
 旧通商産業省(現経済産業省)は零細小売業者を守るために大規模小売店舗法などを作って大型店の出店を妨害した。しかし大店法では規制できないコンビニエンスストアが出現すると瞬く間に淘汰されてしまった。大店法は仮死状態の零細店の延命策に過ぎなかった。零細店が滅んだことによって消費者の生活は不便になっただろうか。多分コンビニのほうが使い勝手が良かろう。老人の多くが今ではコンビニのヘビーユーザーになっている。
 日本の国土は世界でも稀なほどの農業好適地だと思う。これほど水に恵まれた土地は滅多に無かろう。日本の農業を破壊したのはGHQによる農地改革であり、それを何とかソフトランディングさせた農林水産省の罪はそれと比べれば小さかった。
 しかし今尚、これまでの政策を維持しようとするなら農水省は国民の敵だ。農水省の政策が農業保護ではなく省益の追及であることは、麦や豚肉やバターに対する異常な関税や国家貿易などを見れば明らかだ。農業保護を隠れ蓑にした省益追及だ。
 農業支援が零細農家の延命策や農水省の省益に化けては困る。現在の稲作は昔とは違って非常に楽になっている。機械化と農薬の賜物だ。だから今や農家の大半を占める兼業農家や退職後農家は片手間でできる稲作をやめようとしない。こんな家庭農園付き一戸建て住宅を支援する必要性は全く無い。大切なのは実際に国民の食を支えている専業農家だ。支援策は専業農家に的を絞るべきであって、兼業農家や退職後農家の道楽の場となっている貴重な農耕地を彼らから取り上げる政策があっても良いぐらいだ。
 少なくともこのことだけは明らかだ。守るべきなのは農業とそれを支える専業農家だ。弱者救済という嘘を使って、道楽にも等しい兼業農家や退職後農家の小遣い稼ぎを手伝うべきではない。水田は政治家のための票田や農水省のための金脈ではない。本当の農業振興策こそ必要だ。

増税

2015-11-01 09:44:26 | Weblog
 所得税を一律20%とする。権利が平等であるように義務も平等だ。税率が平等であれば高額所得者ほど多くの税金を負担することになるからこの制度によって低所得者は多くの恩恵を蒙ることになる。
 こんな説明に納得する人はいない。所得税に累進税率を組み込むことが常識になっているからだ。それならなぜ消費税が平等であることを不合理と考えないのだろうか。所得税と同様に、多くを消費できる人に対する累進税率があるべきだろう。私は消費税を、平等に負担させる悪税と考える。消費税に逆進性など無く悪しき平等性がある。逆進性を緩和するという口実で軽減税率が検討されているがこれはまやかしの政策だ。
 生活必需品である食品の税率を軽減しても矛盾の解消にはならない。収入別のエンゲル係数を見れば、年収436万円以下が24.5%で906万円以上が20.4%とたった4%しか違わない。食品を軽減税率にした場合、高額所得者のほうが多くの恩恵を蒙る。
 生鮮食品だけを軽減するという案もあるが、私自身が貧乏学生だった頃を思い出せば適切な対策とは思えない。食品のメインはインスタントラーメンだった。生鮮食品として常備していたのは卵とキャベツだけだった。これでは生鮮食品だけを優遇することは不合理だ。昨今ではコンビニの惣菜類が充実しているから加工食品のほうが生鮮食品よりも必需品なのではないだろうか。
 今回は見送られたが、発泡酒・第3のビールを増税してビールを減税しようという悪巧みも進行中だ。これは明らかに金持ち優遇策だ。自民党政権の基本は金持ち優遇だ。消費増税は貧しい人からも平等に搾取する悪税の拡大だ。根本的な問題から目を逸らせるために、問題の解消にはならない軽減税率を巡る公明党との確執に注目させているのではないだろうか。マジックのトリック隠しのような姑息な手口だ。
 消費税が導入されたのは、所得を把握することが難しいために「クロヨン(9・6・4)」とか「トーゴーサン(10・5・3)」といった不公平を免れなかったからだ。収入が把握できないから支出に課税するという、いわば苦肉の策だ。
 マイナンバー制度によって収入が把握できれば脱税を根絶できる筈だ。これが可能であれば消費増税など必要であるまい。マスコミはマイナンバー制度をプライバシーを侵害する悪政で軽減税率は善政であるように報じているが根本的に間違っているのではないだろうか。脱税さえ防げれば、平等に課税する悪税である消費税など廃止しても良いのではないかとさえ思える。