俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

MRJ

2015-11-13 10:32:17 | Weblog
 空の旅は陸や海とは大きく異なる。陸や海でのトラブルであればそこに留まることができる。エンジンが動かなくなってもその場で待っていれば何とかなる。しかし空には留まれないから落下する。だからこそ航空機の安全性は電車・自動車や船よりも重視される。それだけに国産ジェット旅客機MRJが開発されたことは朗報だ。
 日本製品は故障が少ない。日本の自動車が世界中で支持されているのはこのことが大きな要因だろう。かつては家電なども国際競争力があったが中国製や韓国製などに駆逐されつつある。これは自動車ほどには安全性が重視されないからだろう。現在の日本製品の輸出は自動車に頼り切っている。これは良くない状況だ。
 一時期「選択と集中」という言葉がビジネスのキーワードとして持て囃されたがこれは危険な戦略だ。大博打のようなものであって、当たれば大きいが外れれば悲惨だ。その典型例がシャープとサムスンであり、主力商品と心中することにもなりかねない。その逆が百貨店だ。斜陽産業と言われて久しいのに滅びないのは「百貨」を扱っているからだ。呉服や進物から婦人雑貨、婦人服、食品と主力商品を変えているから生き残っている。
 自動車産業は裾野が広いと言われている。単なる移動手段ではなくエアコンやオーディオやエアバッグなどが装備されているから部品数は約3万点と言われている。MRJは桁が違う。約100万点だそうだ。膨大な数の下請け企業が参加することになる。現時点ではエンジンなど約7割を輸入に頼っているらしいが、今後徐々に国産化を進めればGDPへの貢献は更に大きくなる。このことは単に国益に留まらない。航空機の安全性が高まることは世界中の人々にとって好ましいことだ。
 航空機開発で日本が遅れを取ったのはGHQによって航空機の研究が禁止されたからだ。世界の最先端の技術を持っていたからこそGHQが禁止した。この一事を見てもGHQの狙いが日本の弱体化であったことは明らかだ。GHQによってすっかり洗脳されたマスコミが指摘しないことだが、私は航空機の禁止も農地改革も憲法も、日本を劣化させてアメリカによる世界支配を推進するために強制した悪政だと思っている。サンフランシスコ平和条約によってようやく日本はGHQによる支配から免れた。
 この禁止期間は丁度、航空機がプロペラ機からジェット機へと移行する時期に当たっており日本は技術革新に乗り遅れてしまった。そのために折角、技術がありながら外国企業の下請けという立場に甘んじざるを得なかった。とは言え、下請けを務めることによって最先端技術に追い付けたとも言えよう。
 随分寄り道をしたがまだこれからの巻き返しは可能だろう。航空機産業以上の巨大産業は今のところ見当たらないだけに、持続的な経済成長を図るためにはここが勝負所だろう。これまで自動車などで培った安全・低燃費という日本製品の長所が発揮される絶好のチャンスだろう。

医療過信

2015-11-13 09:43:51 | Weblog
 心理学用語に「ハロー効果」という言葉がある。「後光効果」とも言う。これはある分野で顕著な功績があった人を、他の分野でも過大評価することだ。ノーベル賞の受賞者を人格者であるかのように思い込むことなどがその例だ。有効な医療があるからこそ偽医療が蔓延る。
 動物には自然治癒力が備わっているから多少の不具合なら自力で治す。これが動物と機械の根本的な違いだ。医療はその手伝いをすべきだ。ところが自然治癒力の妨害をする偽医療がある。不快感を誤魔化すことによって却って病気を悪化させている。その典型例が解熱剤と下痢止めだ。
 風邪をひけば発熱する。この発熱は病状ではなく、熱に弱いウイルスに対する攻撃だ。解熱剤を飲めば体温が下がって楽になるがウイルスも元気になる。その結果、風邪からの回復が遅れる。風邪を治す薬などこの世に無い。安静にするのが一番だ。
 胃腸に有害物が入れば下痢をする。これは有害物を一刻も早く対外に排出するために必要な反応だ。こんな時に下痢止めを飲めば有害物が体内に留まる。和歌山の砒素カレー事件でも、堺市のО-157集団食中毒事件でも、下痢止めを処方された患者の死亡率が有意に高かったそうだ。自然治癒力の妨害をするからそんなことになる。
 解熱剤や下痢止めの例のように、不快感の緩和は多くの場合有害だ。薬効と思うのはただの錯覚だ。対症療法薬で不快感を誤魔化している内に自然治癒力が働いて治ることを薬効と勘違いしている。こんな錯覚に付け込んで金儲けをしようとする医療など詐欺のようなものだ。
 機械の故障は修理しなければ治らない。しかし動物には自然治癒力が備わっているから多少の不具合があっても勝手に治る。治療をしたから治る訳ではない。機械文明に馴染んでしまったから修理(治療)をしなければ治らないと思い込んでいる。
 医療の総てが有害な訳ではない。有益な医療は3つある。①緊急時対応②病原体対応③栄養補給。この3つ以外は殆んどが有害だ。漫画の「仁」でも描かれたが、ペニシリンは画期的な細菌性感染症の治療薬だった。そのために人々は医療を過信してしまった。この3つ以外の医療は祈祷と同レベルのオカルトに過ぎない。有効な医療があるからと言って医療全般を信じるべきではない。それは親切そうな詐欺師に全財産を預けるような愚行だ。
 医療に可能なことと不可能なことを識別する必要がある。前述の3つ以外は今のところ殆んどが無効だ。医療よりも手洗いやうがいのほうが有効だ。最近、ノロウイルスの予防に手洗いとうがいが奨励されているが、裏を返せばそれ以上にマシな手立てが無いということだろう。医療を過信すべきではない。