俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

続・肉

2015-11-07 10:45:34 | Weblog
 10月28日の「肉」という記事でWHOによる「加工肉を1日に50g食べると癌に罹るリスクが18%高まる」という発表を与太話として否定した。5日付けの「一般論」でも書いたとおり、相関と因果とを混同する偽科学が余りにも多い。
 「肉」で使った論理はこうだ。①癌は細胞のコピーミスによる老人病(修正:より正確にはDNAのコピーミスによる細胞の異常化)②長生きすればコピーミスが増えて癌に罹る可能性が高まる③癌と肉食を因果付けることは論理的に無理。
 この記事で私は癌が老人病であることの根拠を提示しなかったので少し古いが「2005年国立がんセンター年齢別がん死亡リスク」より引用する。日本人男性が癌で死亡する確率は26%だ。これを年齢別で見れば、50歳までは0.6%、60歳までは2%、70歳までは7%、80歳までは16%、(100歳+αでようやく26%)となっている。このことから癌は加齢性変異と推定できる。
 私が罹患率よりも死亡率に注目するのは理由があってのことだ。日本では癌の定義がかなり曖昧なために欧米であれば腫瘍と判定されるものまで癌と呼ばれている。だから早期発見・早期治療が成功したしたとされている事例の大半が「がんもどき」に対する空騒ぎだ。患者が本当に癌だったかどうかは分からないが、その一方で癌によって死んだ人は間違いなく癌だったと言える。だからこちらのデータのほうが信頼性が高い。
 「肉」の記事に妙なコメントが付いている。論点は2つ。①肉食しない国が癌にならないのは事実②子供の癌があるから寿命とは無関係。
 この人がなぜこんなに感情的になるのかよく分からないが、指摘されたことを無視すべきではなかろう。
 ①については私は全く疑いを挟んでいない。但し事実であるということだけで因果と決め付けることは余りにも軽率だ。第3の原因があり得るからだ。寿命以外に医療制度や環境や貧富などが真因ともなり得る。
 ②については、例外を過大評価する無理な論法だ。例えば「卵でアレルギーが起こるから毒物に指定しろ」などが類例だ。例外は常に存在し得るからこそ慎重に判断する必要がある。因果性を特定するためにはまず統計的データに基づいて傾向を正確に把握せねばならない。卵を例にするなら「卵は通常毒物ではないがアレルギー体質の人もいる」が正しい判断だろう。国立がんセンターののデータを見る限り、癌と年齢の相関性は肉食の比ではなかろう。
 子供の癌はほとんどが先天性異常で稀に放射線被曝がある。これらは細胞のコピーミスではなくDNAそのものの異常だ。DNAが狂っていれば胎児の時点から癌細胞を持つこともあり得る。しかし子供の癌は稀なものであり、卵アレルギーと同様に例外扱いすべきだろう。癌は老人病と言い切って良かろう。

進歩的文化人

2015-11-07 09:48:48 | Weblog
 子供の頃から「進歩的文化人」と呼ばれる人々が嫌いだった。イデオロギー云々ではなくとにかく胡散臭かった。その胡散臭さの正体が何なのか子供の私には分からなかったが、朝日新聞が昭和20年の9月にGHQによって発行停止処分を受けたことを知って謎が解けたような気がした。彼らはGHQを恐れGHQに迎合する記事しか書けなくなったということだ。この事実を認めずに抑圧したからトラウマが生じて集団的神経症に罹った。彼らは最早存在しないGHQを神のように崇めることによって精神的安定を求めた。
 あるいは奴隷根性の人もいただろう。彼らは命じられたことに唯々諾々として従う。状況が変わればその状況に応じて考えそのものも変える。まるで文章の自動販売機のような人だ。
 憲法を一字一句変えさせまいとするのはそれが神(GHQ)によって与えられた掟だからだ。モーゼの「十戒」が神聖不可侵であるように日本国憲法を不磨の大典と位置付ける。憲法を変えようとする不届き者は「背徳者」だ。彼らは理性ではなく信仰に基づいて憲法を守ろうとしているのだから、彼らとの議論はまるで神学論争のようになってしまう。
 広島の原爆記念碑に刻まれた奇妙な碑文「過ちは繰り返しませぬ」について中国が親切で分かり易い解説をしてくれた。2日の国連総会での核兵器廃絶決議において中国代表は「(原爆は)日本が始めた侵略戦争の必然的な帰結だ」と主張して決議にまで反対した。つまり過ちを犯したのは大日本帝国でありアメリカに落ち度は無いということだ。中国人やアメリカ人がそう考えるのは彼らの勝手だが、被災者である日本人までそんな歴史観を持つ必要はあるまい。
 「原爆許すまじ」も奇妙な言葉だ。まるで原爆が自らの意思で爆発したかのような表現だ。強盗にナイフで殺された人の遺族が「ナイフ許すまじ」と言うだろうか。非難されるべきなのは原爆ではなくアメリカによる戦争犯罪だ。GHQに迎合し続けるからこんな変な表現しかできなくなっている。
 勿論今更アメリカを咎めたい訳ではないし賠償請求をしようとも思わない。これは対外問題ではなく国内問題だ。過去は「水に流して」未来志向であるべきだ。しかし歪められた認識を訂正することが必要だ。アメリカは正しく原爆投下も正しいという狂った認識を改めなければ、今後アメリカがどこかの国に核攻撃をすることも正しいという困った理屈に繋がりかねない。
 昔「西側の核兵器は侵略のための極悪の凶器だが東側(共産圏)の核兵器は平和のために必要だ」と訳の分からないことを言う進歩的文化人がいたが、核兵器はイデオロギーとは無関係に絶対悪と位置付けるべきだろう。国際問題を戦争によって解決すべきではないし、たとえ戦争になってもABC兵器(Atomic,Biological and chemical weapons)を使うべきではない。