胎児や子供の頃の健康状態が、成人になってからの健康状態に影響をあたえることが、徐々にわかってきている。
もう、私たちは子供の頃に戻れないから、気を付けなければならないのは、自分の子供ということだろう。
例えば、子供の頃の体力が、寿命に影響を与えるという報告がある。
お茶の水女子大の曽根 博仁准教授らが、女子生徒519人が行った千メートル走や木棒投げなどの体力テストのデータをもとに、女子生徒510人を追跡調査した。
その結果、体力テストで上位から半数の生存率は、50歳で97%、下位の半数は95%と差は小さかった。
だが、70歳を過ぎると両グループの差は徐々に広がり、上位の生存率は80歳で89%、下位は82%となった。
また、妊婦時の健康状態がその後の健康に影響を与えるという報告もある。
例えば、妊婦が戦時中の食糧不足などで飢餓体験をすると、3000g未満の低体重児が生まれやすいく、こういう子供が大きくなって飽食状態になると糖尿病になりやすい。インドやオランダで記録が残っている。
この理由は、そのような状態で生まれた子供は体質的に糖を分解するインシュリンの分泌が少ないからだという。
糖尿尿は、インシュリンの分泌の能力に関係している。インシュリンは、血液中の糖を細胞に取り込み、血糖値を下げる働きを持つ。このホルモンを分泌する能力はすい臓の働きによる。
日本人は欧米人に比べその能力が低い。それゆえ、欧米人は肥満になっても糖尿病になりにくく、能力の低い日本人は肥満でなくても糖尿病になりやすい。
日本人が体質になった原因は、縄文時代から近代に至るまで、数千年にわたる質素な食生活にあるという。
日本の若い女性たちの「やせたい」という願望が、将来の糖尿病患者を増加させる恐れがある。
ダイエットをするのではなく、ほどほどに食べることも重要である。