覇権国がどのようにして覇権国になったのか、エネルギーを軸に、少しだけ世界史を紐解いてみる。
まず16世紀、最初の覇権国となったのはポルトガルであった。ポルトガルは地の利を生かして、大航海時代の幕を開けた。その後、ポルトガルはスペインに吸収された。
代わって、17世紀の覇権国になったのはオランダである。オランダの繁栄のポイントは風力エネルギーにある。つまり、風力を使って土地を干拓し、生産性を上げた。そして、帆船によってアジアに進出し貿易したことで富を築いた。今もその当時の風車が残っていて観光の名所となっている。
しかし、そのオランダも3回にわたる英蘭戦争に敗れ、18世紀になると覇権国はイギリスに移った。イギリスの繁栄は炭鉱の石炭と蒸気機関によるエネルギー革命によってなされた。エネルギー革命というより産業革命というほうがポピュラーかもしれない。この革命によってイギリスは世界を支配した。蒸気機関は、まず炭鉱の排水ポンプの動力として実用化され、さらには蒸気機関車、蒸気船、蒸気自動車と発展していった。また、石炭による鋼鉄の生産拡大と蒸気機関による巨大な鋼鉄船が大量海上輸送を可能にした。
しかし、七つの海を支配したイギリスも二度の世界大戦により疲弊し、第二次世界大戦後、覇権はアメリカとソ連に移る。アメリカは石油と内燃機関(エンジン)により、自動車と航空機を生み出した。それにより生産性が飛躍的に拡大し、富を築いた。また、ソ連がもう一つの覇権国になり得たのも、石油のおかげである。
これらの歴史が示すように覇権国とエネルギーには密接な関係がある。アメリカがイラク戦争をしたのはエネルギー資源を確保するためである。また、現在イランと緊張関係にあるのも、エネルギー資源を確保するためである。
ただ、問題なのは、アメリカが資源国を支配しどんなに収奪しようが、資源はいつか枯渇してしまうことにある。ずーっと採掘し続けることはできない。じゃあ、石油資源がなくなったその後、世界はどうなるのだろうか。
それについては、また後で検討しよう。