前にも書いたと思うが、エネルギー資源の重要性について、ちょっとおさらい。
エネルギー資源は、石油、石炭、天然ガス、原子力が主なものである。石油は自動車・航空機などの燃料やプラスチック製品に、石炭は製鉄、天然ガスは発電などに使われる。
社会実情データー図録 主要国のエネルギー源構成
このエネルギー資源はいろんな用途に使われる。
例えば、私たちの食料生産に必要な窒素肥料には、かなりのエネルギー資源が使われている。
窒素はタンパク質を構成する要素である。つまり、窒素は生物が体を維持するために必要な栄養素で生物にとって不可欠な要素である。
しかし、窒素のほとんどは大気にあり生物はそれを利用できない。そこで、植物が動物の排泄物や死骸から窒素を取り込んでタンパク質を作る。それを私たちが食べるか、もしくはその植物を食べた牛や豚を食べるという方法で体にタンパク質(窒素)取り込む。また、大豆などの豆類は根リュウ菌を利用して窒素を取り込むことができる。このように、その私たちの排泄物を植物が取り込みそれを人間が取り込む流れを、窒素循環という。
しかし、この窒素循環では十分な食料が生産できない。そこで、20世紀にドイツのハーバーさんとボッシュさんが、空気中の窒素を固定化する方法を見つけた。これがいわゆるハーバー・ボッシュ法である。水と空気と石炭からパンを作る方法をいわれる。この窒素固定は1:3の窒素と水素の混合気体を250気圧に加圧し、450℃にまで温度を上げる。この温度を上げるときに石炭が使われるわけである。すなわち、私たちの食料には大量のエネルギー資源が使われている。それゆえ、今の人口を支えるだけの食料を供給するには、かなりのエネルギー資源が必要なのである。
また、日本はエネルギー資源を輸入し、鉄やプラスチック製品をうまく加工する。そしてそれを輸出することで、経済を発展させてきた。したがって、ものづくり日本にとって、製鉄は非常に重要である。だから製鉄とエネルギーの関係についても言及すべきだろう。
現在の世界の粗鋼生産量は年間約15億トンといわれている。日本の粗鋼生産量は年1億トンである。製鉄するためにはおおよそ1000℃くらいの熱が必要であり、それに石炭が使われる。
もし、昔のように石炭を用いず、木炭を用いて製鉄したとしたらどうなるだろうか。
1トンの製鉄のためには、14トンの木炭が必要とされる。そのためには、0.5ヘクタールの森林を伐採しなくてはならない。15億トンの鉄を木炭で製鉄したら、7.5ヘクタールの森林を伐採しなくてはならない。世界の森林面積は38.7億ヘクタールといわれているから、石炭を使わなかったら、5年で世界の森林は消滅してしまう。
そもそも、中東の文明が消滅したのは、森林を伐採したからである。エネルギー資源がなくなったら、世界規模で同じ事が起こるといえる。
日本の食料自給率について、いろいろ議論がされるが、エネルギー自給率はもっとひどいことになっている。原子力発電を含まないエネルギー自給率は5%ほどである。
原子力発電に使われるウランも外国から輸入している。それを考えると、日本の95%のエネルギーは外国から買っているということになる。日本の稼いだお金はエネルギーを買うことに費やされている。それもかなり高額である。
よく、日本の会社はブラック企業が多いといわれることがある。それはそうだろうと思う。これだけのエネルギーを外国から買わなくては経済が発展できないからである。だから、エネルギー資源を有している国より過剰に働かなくてはならないのである。
社会実録データー図録 主要国のエネルギー自給率とエネルギー効率 4060
経済成長は、エネルギー資源の量と切り離して考えることはできない。地球のエネルギー資源が減少して、値段が上がっていけば、必然的に日本の経済成長は止まるだろう。
次は、このことを前提に、これからの覇権国家のあり方について考えてみたい。