オウム真理教の信者の洗脳を解いたことで有名な苫米地氏によれば、変性意識とは、臨場感を感じている世界が物理的な現実の世界ではなく、映画や小説といった仮想世界にある状態である、という。
ちょっと難しい言い回しだが、簡単にいえば、意識が妄想の世界にいっている状態をいう。脳機能学者の苫米地氏らしい言い回しである。脳の内部で起こっていることを基準に定義している。
私が問題にしている「変性意識」はもう少し限定的だ。
すなわち、変性意識とは、自己保存本能が低下した状態をいう。もう少し簡単にいうと、死ぬのが怖くない状態である。頭がぶっ飛んだ状態だ。
私たちは、状況が整えば、思ったより簡単にこの変性意識状態になる。
例えば、記憶に新しいのは、東日本大震災で、自分の命が危ないにもかかわらず、高台への避難を呼びかけた防災放送担当の女性職員である。この女性職員は、完全に自己保存本能が低下している。このような危機的状況では、変性意識状態になりやすい。
また、飲酒、麻薬摂取、瞑想、音楽、映画、小説、洗脳などでも変性意識に陥る。
男は戦争の時に変性意識になりやすく(特攻隊など)、女性は育児をしているときに変性意識になりやすい(自分の命より子供を優先)。
この変性意識は、宗教とも密接に関連している。宗教は個人をこの状態にもっていくための装置になっている。宗教は命の大切さを説きながら戦争を否定しない。むしろ、戦争を増長する。キリスト教とイスラム教の争いを考えれば明白だろう。
もし、人間が自己保存本能を優先する遺伝子しか持っていなければ、子供を育てることはできず、簡単に滅びてしまうだろう。また、戦争で自分の命を投げ出し仲間を守る人がいなければ、敵からの侵略を防ぐことはできない。
この世には自分の命より大切な価値がある。私たちは、その価値を守る本能が備わっている。その本能を呼び起こすのが、「変性意識」である。