アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

<呼吸の写真家>佐伯朋美さんの写真展を見ました。

2019-01-29 15:16:34 | 映画とドラマと本と絵画
   豊田市山間地にある足助病院で、ただいま、病院に入院しているお年寄りと、面会にいらしたそのご家族を撮った写真の展示会を開いています。

   写真展のタイトルは、「家族 時間の交差点」。撮影したのは、写真家の佐伯朋美さんです。写真はすべて、病院で希望者を募り、面会時間に彼女が同席して撮影したもの。ほぼ寝たきりで病床にある患者さんたちが対象です。
   
   多分親子と思われる二人の、手の表情が印象的な一枚。

    ほとんど口を利くのもままならない病人と、意思の疎通ができるのは手だけということなのでしょうか。そのことを佐伯さんは察知して、この写真展では手の印象の強い写真がおおく展示されているように思えます。

     撮影は、病人の周りに家族が集い、和気あいあいとした雰囲気のうちに進められたよう。家族の笑顔が、さわやかです。

     わたしは、7年前に、この足助病院で実母の看護に当たっていました。当時86歳だった母は、ある日突然意識不明となり、救急車で運ばれました。意識は数日で戻りましたが、口はきけず、全身衰弱状態に。前々からの母の希望もあって、一切の治療は施さず、点滴のみでそのまま過ごすことにしました。

     しかし、一月経っても顔色は変わらず、さらに衰弱して死に至る気配が見られません。死を待つことがしだいに胸苦しくなり、親しくしていた友人の医者に診てもらいました。すると、彼は、「胃ろうの措置を施せば、おかあさんはひょっとして元気になるかもしれない。それくらいしっかりしている」と言いました。延命装置をつけることなど、考えてもいなかったのですが、このまま彼女の餓死を待つのがいたたまれなくなり、措置をしてもらうことを決めました。

      胃に穴をあけて管を通す、というのは弱っている病人には大変な負担となるので、その前に、のどを切開して管を通し、経管栄養を与えることになりました。与え始めてじきに母の顔色はバラ色になり、その内表情が出始め、ときには笑顔も見せるようになりました。そのときの笑顔が、すばらしかった。母はあまり快活ではなく、どちらかというと暗い表情が多かったのですが、そのときは誰彼となく笑いかけるようになり、キラキラ輝いて見えました。看護師さんたちの中には、「〇〇さん(母の姓)を見ると癒されるわ。ちょっと休みに来た」といって、母の病室に立ち寄ってくださる方もいました。全く社交的でなかった母が、あんなふうに人から遇されたのは初めてだったのではないかと思います。言葉も少しですが発するようになりました。

      その後、胃ろうを施したのですが、この措置は結局母にはあわず、ほどなく亡くなりました。本人も望まず、担当医もしぶった延命治療を一時的にも施したことは、母にとってよかったのかわるかったのか、今でも時々思い出しては、どちらとも決めかねる思いでいます。それは、あの経管栄養を施したときの、母の笑顔を見ることができたから。私たちは決して仲のいい親娘ではなかったのですが、あの笑顔は今でもはっきり覚えています。

      佐伯さんが撮った写真を見て、あのときのあの笑顔を写真に収めることができていたらなあと何度も思いました。誰よりその写真を見せたかったのは、母自身にですが。

      写真展のちらしには、こう書かれています。「面会時間を目標に昔の思い出が溢れ、その時間がまるで本にしおりを挟んだように忘れがたいものになる。意識していないと大切な時間は、指の先からスルスルと落ちて行く。家族の大切な時間を、写真でおさめました。あなたの交差点を見つめるひとときに」

    写真展は、2月15日まで。足助病院内の玄関ホールと東側エレベーターホールにて開催しています。

    ところで、佐伯朋美さんは、1昨年春、東京から三河山間地に移住した写真家。私の焼き菓子を召し上がってくださったのがきっかけで、交流が始まりました。その彼女が撮ってくれた写真で構成したパンフがこちら。昨年末、できあがりました。

    デザインとコーディネートは、稲武出身のデザイナー松井香澄さん。二人が協力して、わたしにはもったいないような素敵なパンフを作ってくれました。イベントや講習会の折にお配りいたします。

     なお、佐伯さんは、ヨガのインストラクターでもあります。自らを「呼吸の写真家」と名付けるのは、呼吸をことのほか大事にするヨガを深くご存じだからこそ。息遣いまで撮りたいという思いが込められているようにおもいます。フリーのカメラマンとして、記念日や家族写真、大事な友達との思い出のための写真などの撮影もひきうけてくれます。気軽にご相談ください。連絡は、05035881011 kokyu.photo@gmail.com まで。    
    
   
   
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奄美・加計呂麻島の旅~補遺

2019-01-29 01:13:11 | 小さな旅
  昨秋旅した奄美・加計呂麻島。シーカヤックとシュノーケリングを楽しませてもらい、島の生活や食べ物のことなど教えてくださった、little lifeの天野宏美さんから、島の海で撮った魚の写真が届きました。私たちが島で実際に目にした魚の写真もありますので、ちょっと紹介します。前にも書きましたが、浜からほんのちょっと沖に出るだけで美しいサンゴ礁が広がり、色も形も面白い魚が泳いでいるのです。いま、改めて写真を見て、あの海の中の光景を思い出すと、ほんとに貴重な場所だな、としみじみ感じます。鍵カッコ内は、宏美さんのコメントです。

  まずはこちら。「サンゴの隙間に見え隠れする赤いお魚、わかりますか〜? たぶん、アカマツカサかな。暗いところを好むので、お目目が大きいのです」

  私が島で見た魚のうち、もっとも美しいと思たのがこのルリスズメダイ。「この子は撮影が難しくて、あまり上手く撮れていませんが、記念に・・・」以外に目がきついのにびっくり。

  「これは泳いでいてもちょろちょろ見られたニジハギくん。この子もすばしっこいので撮影が難しいのですが、ちょっと上手く撮れたので。うふ」

   「サンゴ礁の上を悠々と泳ぐは、ノコギリダイです。尾の付け根の黄色い点が綺麗です。」

    「黄色いけれど、アカヒメジ」

  「尻尾が白くて群れているのがアマミスズメダイです。
鮮やかな黄色い体に白い顔、黒い斑点があるのがヒフキアイゴ。」

   「おまけのアオウミガメちゃん今回は会えませんでしたが、こうやってサンゴ岩の下でお昼寝したりしています。可愛いですね〜」

    宏美さんのコメントからは、海の生き物をいとおしく思う気持ちが伝わってきます。little lifeのHPには、さまざまの海の生き物や波、木々、空、浜辺などを撮った写真が載っています。彼女のfacebook にも、朝焼けの浜、夕暮れの空、波のしぶき、釣りたての魚の写真が。いつもうっとりして眺めています。

    加計呂麻島の属する瀬戸内町は、奄美本島の最南端を含む町。その瀬戸内町の本島側の西の浜に、5000人が乗れる大型クルーズ船の発着のできる港を作る計画が、進んでいます。中国人の観光客を当て込んでの計画らしいのですが、もし計画が実現してたくさんの人たちが押し寄せたら、ホテル一つない加計呂麻島も、一気に変わってしまうことでしょう。反対している人たちもけっこういるようですが、いまのところ撤回の見込みはないようです。今後の成り行きが心配です。

     先日、やっと夜光貝のペンダントを完成させました。このペンダントは、加計呂麻島の諸鈍の体験施設で材料を購入し、磨き体験したもの。ほんとは1時間半かけて磨き続けるというワークショップだったのですが、10分足らずでギブアップしました。それからふたつき、放置してあったのですが、先日やっと、旅に同行した友人の家に泊まったときに、ふたりしてそれぞれの貝を、2時間ちかくかけて磨きました。ピカピカになった夜光貝、旅の思い出になりました。
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