いつの頃からかは忘れてしまったのだけど、僕はエビフライの尻尾を食べるようになった。
エビフライの尻尾は残すものだと思っていたのだけど、ある時友人が、
「なんで残すの? もったいないやん。カルシウムがいっぱいあるんやで」
と言い、嬉しそうにエビフライの尻尾を口へ放りこんだ。
僕は、彼の満足そうな表情に誘われて食べてみた。
案外、おいしい。
どうして今まで捨てていたのだろうと不思議に思ったくらいだった。
今でもごくたまに日本料理屋でエビフライを注文することがあるけど、無性にエビのしっぽを食べたくなる。自炊せずに全部外食で済ませているから、カルシウム不足なのだろう。おまけに外国で暮らしていると日本では自然と摂取できていた栄養分が摂れなくてバランスが偏るのかもしれない。中華料理でも川エビのフライがあるのだけど、それが出てくると、ほかの料理にはめもくれずに川エビを頭から丸かじりばかりしていたりする。身体が自然とカルシウムを求めているようだ。
尻尾を嚙み砕く時のばりばりとした食感が楽しい。
なんだか元気になれそうな気がする。
(2011年1月11日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第72話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/