風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

影がなくなる日(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第178話)

2013年06月14日 20時51分41秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 広東省には北回帰線が通っている。
 だから、夏至前後になると太陽の光がほぼ真上から射す。
 この頃、お昼に外へ出ると、ほんとうに影が短くなった。
 身長の十分の一くらいしか影がない。ひしゃげた自分の影は、なんだかドラえもんが歩いているみたいだ。
 こんな強い太陽が出るのだから、もちろん暑い。広州で三年半暮らすうちに、顔も腕もかなり日焼けしてしまった。黒いからわからないけど、しみとかそばかすがいっぱいできてるんだろうなあ。
 これから夏至にかけてもっともっと影が短くなって、夏至の南中時には太陽が文字通り真上にくる。影がまったくなくなる。影がないというのはなんとも不思議な感じだ。御伽噺のなかへ入ったみたい。
 広東の夏至は、日本では味わえない年に一回のちょっとしたイベントだ。
 今からわくわくしている。




(2012年5月25日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第178話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

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