広東省には北回帰線が通っている。
だから、夏至前後になると太陽の光がほぼ真上から射す。
この頃、お昼に外へ出ると、ほんとうに影が短くなった。
身長の十分の一くらいしか影がない。ひしゃげた自分の影は、なんだかドラえもんが歩いているみたいだ。
こんな強い太陽が出るのだから、もちろん暑い。広州で三年半暮らすうちに、顔も腕もかなり日焼けしてしまった。黒いからわからないけど、しみとかそばかすがいっぱいできてるんだろうなあ。
これから夏至にかけてもっともっと影が短くなって、夏至の南中時には太陽が文字通り真上にくる。影がまったくなくなる。影がないというのはなんとも不思議な感じだ。御伽噺のなかへ入ったみたい。
広東の夏至は、日本では味わえない年に一回のちょっとしたイベントだ。
今からわくわくしている。
(2012年5月25日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第178話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/