銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

「鳥毛ひねり」の怪

2010年02月08日 | のほほん同志Aの日常
ある朝のこと。

「この2月の秋葉祭りに申し込みたいんだけど
 ちょっと気になってることがあって…」と、お電話がありました。

「はい、何でしょう?」と、私。

「お祭りのところに『鳥毛ひねり』と書いてあるでしょ。
 これって、どんなものなの?」

あぁ。鳥毛ひねり、ですね…

2年前、土佐の山あいに訪ねた、
なんとも風変わりな祭りが、鮮やかによみがえってきました。

まぶたに焼きついてますから、私の脳裏で映像は鮮やかです。
でもコレが、人に説明するとなるとムズカしいのです。

「えっと、3mぐらいの長い棒があるんですね。
 で、その先にカラスの毛だと思うんですけど、
 鳥の羽がいっぱいくくりつけられてまして…」

「え、カラスの毛?」と、受話器の向こうでのけぞるお客さま(たぶん)。

「はい、カラスの毛。
 で、その棒を黒ずくめの男性2人で
 放り投げては受け止めたりするんですよ」

「はぁ…」と、ますますトーンが下がるお客さま。

さずがにここで、マズイ、と気づきました。
これではお申込を取りやめてしまわれそうです。

そこで、よくよくお話を伺ってみると…。

実はこちらのお客さま、鳥が大の苦手とのこと。
チキンも食べられないし、それより何より、
クチバシや曲がった足の爪やら、鳥のあの形状が怖いのだそうです。

そう聞いてみると、たしかに「鳥毛ひねり」、
クリスマス前にキュッと絞められる七面鳥のようで、
何やら、おどろおどろしいではありませんか。

「大丈夫です、毛だけです。
 鳥のあの形は、どこ見ても、影もカタチもありませんから」

と、あわてて下手なフォローをして、なんとかお申込いただきました。

その後。

作家の坂東眞砂子さんの本に、
この秋葉祭りが描かれているのを見つけました。
少し引用させていただきますと――


 とんとんとととん、とん、ととん。

 ゆったりとした太鼓の音が流れていた。
 眠気を誘うような不思議な旋律に合わせて、
 黒装束の男が踊っている。(中略)

 こちらの青年の手には、長さ7メートルもある棒が握られている。
 棒の先には、髪の毛のようなものがくっついている。
 この棒は鳥毛といい、鶏の尾羽を集めて作られている。
 重さ8キロもある代物だ。

 突然、鳥毛を持った男が上半身を捩じって、棒を天に放り投げた。
 雪化粧をした険しい四国山脈を背景に、
 くるくると回転しながら鳥毛が宙を滑る。

 もう一人の男が落ちてくる棒に飛びつく。
 鳥毛棒が大きくたわみ、次の瞬間、男は見事、
 肩を支えにして棒を受け取っていた。

 固唾を呑んで見守っていた観客の間から、どよめきが湧いた。

 とんとんとととん、とん、ととん。

 太鼓の音が流れ出した。

 黒装束の二人の男は、脚並みを揃えて踊りだす。
 さっき投げ手を務めた青年が、今度は鳥毛棒を受け取るために、
 先の奇妙な踊りを舞いはじめる。

 こうして、この祭りの日、人の首にも似た鳥毛は宙を飛びつづけるのだ。

    (坂東眞砂子著 『身辺怪記』より)


――そうです、そうでした! さすが作家さん。

この「鳥毛ひねり」、
鳥の形というよりむしろ、生首を思わせるのです!


さて明日から、この秋葉祭りと四万十川を訪ねる
2泊3日のツアーに行ってきます。

あの朝、お電話くださった、鳥が苦手なお客さまもご一緒。

おどろおどろしくも魅惑的な「鳥毛ひねり」を目の当たりにして、
どうか卒倒なさいませんように…。


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