今日は何だか気分が重い。毎日、変化のない病院生活だ、入院して2週間が過ぎようとしている。症状は下半身の衰えが特に酷いが他はまあ々順調に回復している。一時、中断したとはいえ通算4年間のドラッグ生活による体力の衰えは著しいものがある。気分も時々激しく苛立ちどうしようもないそんな自分に苦しむ。長期にわたるスタッフの常用は脳に作用して精神的異常をきたすのかもしれない。特に脳の記憶部分を破壊しているように思える。精神病院で治療を受けながら毎日こうしてノートを書いている。漢字が全く書けない。日本から送って貰った和英中辞典の漢字を頼りにして書いている。人名や地名、それにいろんな日常生活に使う物や道具の名前が、アユミとの会話の中で言葉が詰まって出てこない。確かにスタッフはダウナーだし心身に良いわけがないのは分っている。それでも止められない、恐ろしいドラックだ。
二ナの頭の中はどうなっているのか。彼女は20年間もスタッフを吸い続けていると言っていた、二ナも若くして死ぬのだろう。将来とか希望とかそんなものとは無関係に、その日々を粉に酔っていれば良いのだ。苦しい事など何もない。眠りたければ眠り、食べたい時に食べる、まるで動物のような生き方だ。
保釈されて1年振りに会ったフレッドは小さくなっていた、ぼくは別人だと思った。強靭な肉体を持っていたアフリカン・フレッド。粉が日々、彼の身体に侵食し肉体も精神も食い潰していた。それはぼく自身にも言える。粉を止めてぼくは心身の平安を得ることが出来るのだろうか、そんな事を考えているとまた生きる事が面倒臭くなってくる。