12月18日(月)(入院して15日)
気分が重い。動かない身体がそれを助長する、悪の循環だ。小さい病室では歩き回るスペースもない。毎日大量の薬を飲んでいる、気持ちが苛立つ。入院して15日目か、禁断の峠は越えたが回復率は50パーセント以下だろう、身体の痛みと不眠は残っているはずだ。処方薬で抑えているが退院は無理だ。この病院で治しておかないと帰国は出来ない。後どのくらい入院が必要なのか、ぼくには分からないが最終的にはドクターが決める。耐えるしかない。退院したら1週間以内にカトマンズへ逃亡しなければならない。それ以上デリーに留まるのは危険だ、スタッフの魔力に引き摺り込まれる。落とし穴と罠が仕掛けらたデリー。
今日大使館員のCさんと日本からアユミのお父さんが病院へ来られた。お父さんを一目見てちょっと吃驚した、60歳だとアユミから聞かされていたので、ぼくなりに頭の禿げたおっさんをイメージしていた。スーツにネクタイ姿で頭には黒い髪がちゃんとあった。痩せこけて白髪だらけのぼくの方が余程、年寄りに見える。長い旅と11ヶ月の刑務所生活そして精神病院と辛い日々が続いている。ベルトコンベヤーで流されるような東京の生活から逃避し、のんびり楽しく生きようとネパールを選んだ。デリーへスタッフの買い出しに来て1年と3ヶ月が過ぎた。ぼくはまだカトマンズへ戻る事が出来ない。ぼくにとって良き日々はないのか、八方塞がりで出口は遠い、気力も体力も失ってしまいそうだ。ドラッグだけが唯一の旅とは、どうしてそんな人間になってしまったのか、ドラッグ、ドラッグの毎日だった。