ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅              ブラック・アウト・・・7

2012-03-13 | 2章 ブラック・アウト
 牛がやってきた。餌があるのを知っているのだ。オレンジやフルーツを搾った滓は人間にとっては厄介な生ゴミだが、牛にとっては甘くて栄養豊富な食料になる。ジュース屋はバケツに溜めて牛が来ると与える。牛は綺麗に平らげ感謝の気持ちだろうか、べちゃべちゃと落し物をばら撒いて飛び散る、ぼくにとってこれはあまり有り難くはない。しかし乞食にとっては恵みの落し物なのだ。これをバケツで集め乾燥させると日々の燃料となる。バザールにはかなりの牛がたむろしている、ぼくは野良牛だと思っていた。ある朝、牛の尻を細い棒でペタンペタンと打ちながら、兄ちゃんがどこかへ牛を追っている、ぼくは後ろからついて行った。バザールの外れ辺りに行くと、杭に繋がれた数頭の子牛がいた。分かるのだろう一頭の子牛はロープを張って母牛に近寄ろうとして鳴く、母牛の張った乳房は母性によって母乳を出す用意をする。子牛に少し乳を吸わせると後は兄ちゃんの仕事だ、牛乳をバケツに搾り出している。乳房が軽くなった母牛の尻を、ポーンと兄ちゃんが打つと、トットットッと牛はバザールへ戻って行った。牛に餌を与えているわけではないので飼い主とは言えないが持ち主はいたのだ。雌牛はバザールに残る、数頭の種牛を残して他の雄牛は荷役用に使われる。牛はバザールから出る膨大な生ゴミを処理し、インド人にとって大切なミルクを提供してくれる。インドの牛はやはりヒンズー教の神の使徒である。
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