アートセラピー「心のお絵かき」の世界

アートセラピストで妻で母で女の、楽しく豊かでゆるい人生後半日記。

松園と清方

2010-09-13 13:45:30 | 美術・芸術
つまり、清方の美人画は、きれいな女性をもっと美しく見せる絵だと感じます。
だから、隙がない。

粋で、かっこよくて、きれいで、「きゃーすてき!」な感じです。
男性ならではの描き方かもしれませんね。

一方、松園の女性は、在り様としては、すごく普通。

雨に打たれたり、雪に降られたりしながら、着物を押さえて歩く女性だったり、
赤ちゃんを抱いて「ほうら、虹が出てるよ。」みたいに虹を眺める女性だったり、
夕暮れ時の障子をあけて、外の光を頼りに針に糸を通す女性だったり。

そういう普通の女性達が、すごい気品と美しさに満ち満ちて、絵の中にいるのです。

見ていると泣けてしまう。
本当に、それくらい美しい。

これはやはり、女であり母であった松園の力でしょうね。

明治という時代に、女流画家を貫くというのは、並大抵のことではなかったでしょう。

松園は、だからこそ人一倍、真剣に見つめ、真剣に描いたのでしょうね。

その真剣さが、普通に目に見える美しさの奥にある、もう一段高い、「気品」を伴った美しさを
引き出したのではないかと考えています。

松園は
「たとえ邪な心を持った人でも、見ているうちに清らかな心になっていくような、
そういう絵をめざしている」
という意味のことを語っています。

私はこれを読んだ時、非常に感銘を受けましたが、今回の展覧会で、松園が、まさにこのとおりの
仕事をしていたことに、大変心を揺さぶられました。

画家として、究極の取り組みのように思います。

その仕事を支えたのは、松園の真剣さでしょう、間違いなく。

そして、その真剣さを支えたのは「情」だったんじゃないかな。

画集を見ていたときは「美しさ」と「気品」はすごく感じていましたが、今回本物をたくさん見て
意外にも「情」の深い絵なんだなぁ、と感動いたしました。