書名:がん遺伝子の発見 -がん解明の同時代史-
著者:黒木登志夫
出版社:中公新書
出版年:1996年
ジャンル:医学ノンフィクション
東京大学医科学研究所教授だった医師、癌研究者の黒木登志夫氏による著作でした。
内容説明
80年代になってがん研究は様変わりした。原因別のメカニズムがあると考えられていたがんは、今やがん遺伝子という共通のメカニズムで説明できるようになった。生命にとって大事な遺伝子が次々に変異を重ね、行き着いた一つの悲しい結末、それががんなのだ。がん遺伝子とがん抑制遺伝子の発見をめぐって熾烈な競争を繰り広げる研究者たちのドラマと、徐々に明らかになるがんの本態を、自らのがん体験をふまえてヴィヴィッドに描く。
1970年代から1980年代にかけて見つかったがん遺伝子やがん抑制遺伝子は癌の発生メカニズム解明を大きく飛躍させました。いくつかの細胞成長因子や細胞増殖因子の受容体の遺伝子に変異が生じると細胞増殖のスイッチが入りっぱなしになって、無秩序な増殖を始め、これが癌となります。一方、身体には異常を生じた細胞を排除する仕組みがありますが、それらを司るたんぱく質の遺伝子に変異が入ってしまうと、癌抑制のメカニズムが働かなくなり、癌の増殖を止めることができなくなります。遺伝子に変異を生じさせる原因は化学物質であったり、慢性的な炎症であったり、ウィルスであったりと様々です。
この本は著者自身の癌体験や癌発生メカニズム解明に挑んだ研究者たちの奮闘が一般の方にも分かりやすく描かれており、癌のサイエンスに関する一般書籍の中では名著だと思います。
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