「高岡銅器」
Description / 特徴・産地
高岡銅器とは?
高岡銅器(たかおかどうき)は、富山県高岡市周辺で作られている銅器です。室内置物や仏具、花器などの小物から、梵鐘(ぼんしょう)や仏像、銅像といった大物まで様々な物があります。
高岡銅器の銅器販売額・銅器生産量ともに、国内でトップクラスと言えます。全国にある、まちおこしの一貫として置かれているアニメキャラクターの銅像の多くも高岡銅器のため、知らず知らずのうちに見かけている方も多いかもしれません。海外への輸出もさかんで、輸出先の国々から高い評価を得ています。
高岡銅器の特徴は、職人の熟練した手業を駆使した鋳造技術(ちゅうぞうぎじゅつ)と「研磨・彫金・象嵌(ぞうがん)」といった加工技術が施されていることです。技術の融合が豊かな表現を生み、発展してきました。
高岡銅器の力強いさと繊細さ、しなやかさを備え持った造型は見る人の心を惹き付け、時が経つにつれて表情に深みが生まれるように作られおり、経年変化を楽しむことが可能です。
History / 歴史
高岡銅器 - 歴史
高岡銅器の起源は、今から400年以上前の江戸時代に遡ります。1609年 (慶長14年)、加賀藩二代目である藩主・前田利長が高岡城入城しました。その際、城下の発展を図るために、1611年(慶長16年)に高岡市に7人の鋳造師を迎え入れたことが始まりです。
鋳造師たちを中心にして鋳物工場を現在の高岡市金屋町につくり、最初は農具や鍋など日用品の鉄器を生産していました。その後銅器生産がはじまったのは、天保・弘化(1830年~1848年)頃だと言われています。
明治時代には、オーストリアやロンドン、パリなどヨーロッパで開催された万国博覧会に高岡銅器が多く出品され、ジャパネスク旋風を巻き起こしました。明治・大正時代に置物や茶道道具などの生産が盛んになり、全国に美術工芸品として高岡銅器が認知されると、ギフト需要が高まり発展を遂げます。
1975年(昭和50年)には、日本初の国の伝統的工芸品産地として指定されました。
*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/takaokadoki/ より
金・銀・銅の合金が織りなす美しさ 高岡銅器
高岡銅器の産地は分業化が進んでおり、原型・鋳造・仕上げ・研磨・着色・彫金・象嵌(ぞうがん)などの分野でそれぞれ連携を取り合って製品を作っている。今回は、合金の美しさをうまく生かす象嵌師の方に話を伺った。
親の仕事を手伝って
鳥田宗吾(とりたそうご)さんは昭和15年生まれ。父親が高岡銅器の象嵌(ぞうがん。素地に溝などを彫り、その形に合わせて他の金属をはめ込むこと)の仕事をしていた関係もあり、子どもの頃から銅器の制作現場で仕事を手伝っていた。中学卒業と同時に親元で修行を始める。親が象嵌時に合金を使っているのを見て、合金の魅力にとりつかれ、以来約45年、高岡銅器の制作に携わってきた。「象嵌は手間がかかるから誰もやらん。でも私はやる。」鳥田さんがこう語るのには訳がある。「高岡にはとにかく細かい細工ができる技術があり、そういう細工をすることが高岡銅器の特徴ではないでしょうか。」高岡銅器に対する誇りと、伝統の技を受け継いでいる使命感が感じられる。
金属の色の違いだけで色彩を表現
鳥田さんが得意とする象嵌は、土台となる銅に溝を彫り、そこに金や銀などの金属を入れる。「メッキと違い、一度入れたら絶対に取れない。」と鳥田さんは力を込める。一見すると金色や銀色の細い線がただ描いてあるだけのように見えるものが、象嵌によって金属が埋め込まれていると分かったときには、本当に驚くばかりである。さらに驚くことに、描かれた絵はどれもきれいな色が付いているが、その色は金属が持つ色だけで表現されているのである。「金に銀を混ぜると青金、金に銅で赤金、銅に金で赤銅、銅に銀で四分一」など合金の種類によって色が変わるのである。「作っているときはそんなに色の違いはないんです。最後に薬品に入れて酸化させるとパッと色が出てくる。その時が一番楽しいですね。」と鳥田さんは目を細めて語った。
アイデアは自然を見て
鳥田さんは飾り皿や壺、香炉などに絵を描き、それを象嵌で表現する。その図柄を考えることから仕事の内である。「最近は魚のサヨリを題材にいくつか描いたけど、これは釣りに行った時にサヨリがエサに群がる様子が面白くて図柄にしたんです」と作品を見せてくれた。サヨリが群でぐるぐると回っている絵が生き生きと描かれている。島田さんの作品を見ていると「金属=冷たい」というステレオタイプは打ち崩されてしまう。「絵ができたらほとんど完成です。後はこつこつと象嵌するだけ。」と語る鳥田さん。高岡銅器の象嵌には絵を描く技術も高いレベルが要求されるのである。
現物を見れば分かる
「まあ、一つ作るのに3~4カ月はかかるかな。」それだけに一つの作品の値段は高い。しかし「現物を実際に見てもらえれば、その良さは分かると思います。決して高すぎることはありません」と自分の仕事に自信を持っている。銅器生産が全国シェアの90%を占める高岡は、その技術も他の追随を許さない。高岡のなかで揉まれて付けた自信は、実績が裏打ちされているので心強い。特に合金技術とその色を引き出す酸化技術に関しては、他の産地ではまねができないといわれている。
心にゆとりを
「私が作っているようなものは、ちょっと心にゆとりがないと手が出ませんわな。でも興味がある人はいつでも見に来て欲しい。見ないと分からないことが多いから。」鳥田さんの最近お気に入りの色は「緋金(ひきん)」。淡い赤みを帯びた金に近い銀色と表現すればいいのだろうか。不思議な柔らかい色をしている。これがまさに「見ないと分からない」ものである。この色はぜひ、心にゆとりを作り、直接自分の目で見た方がいい。
こぼれ話
象嵌(ぞうがん)の秘密
土台となる銅に溝を彫って、そこに金や銀の金属を埋め込む象嵌の技術は大変高度なもの。象嵌された部分の断面図をとったとすると、溝の底の部分が広く口のほうが狭くなっていて、その溝に金や銀が埋まっているのです。職人さんが「絶対に取れない」というのもわかりますね。さらに、埋め込まれた金属の上に重ねて埋め込むこともあり、これを「鎧象嵌(よろいぞうがん)」といいます。 金属の埋め込みが終わると最後は薬品に浸けて酸化皮膜を付け、色を付けますが、このとき重要な役割を果たすのが大根おろし。薬品に浸ける前に大根おろしで全面を洗うと金属の色がきれいに出るのだそう。一体誰が発見したのでしょうか。先人が試行錯誤を繰り返したことが想像できます。
*https://kougeihin.jp/craft/0708/ より
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます