田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼の故郷  麻屋与志夫

2008-11-01 23:02:57 | Weblog
「ボスと呼ぶな。犬飼新造だ」
「石裂豪だ」
「豪傑というタイプではないな」
「この男は、石裂屋敷の入り婿です。九尾の血はひいていません」
「それで幻の音にもひっかからなかったのか」

背後で車のエンジン音が起きた。

美智子がヘッドライトをつけたクルマで人狼の群れにつつこんだ。

「ヒロシぬかるな」

人狼のボス犬飼がジャンパ男のヒロシに叫ぶ。

「ヒロシです」

人狼がキメゼリフをはく。

12

屋敷の上空で、霧の街の空で冬の雷鳴がとどろいた。

霧は濃くなるばかりだ。

ねばい霧は寒風に吹き流されることもない。  
さきほどからの、争いで飛び散った血を含んでいる。

血の臭。

生臭い臭。

たしかに生存している証しである血が流され過ぎている。

霧に赤い色がついている。

錯覚ではない。

たしかに赤い霧だ。

粘つく。

粘性の霧が体にねばりついてくる。 

血の成分がふくまれているからなのだ。

その霧の内側に消えた美智子の車を追って門を離れる。

前方の霧の中で車輪のスキット音がした。  

これは幻聴ではない。 

ガオっと人狼が咆哮している。

街のヒトがパーカーのフードをかぶっている。

その闇のなかで目が青く光っている。   

みんな短足になっている。   

手も縮んでいる。 

腰のあたりに段ができ、二足歩行が困難な感じだ。  
いまにも狼となって歩き出しそうだ。   

街が一夜にして、人狼にのっとられてしまったのか。
街のヒトがみんな人狼に変身したのか‼ 




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coelacanth三億八千万年の孤独  麻屋与志夫

2008-11-01 21:40:23 | Weblog
       

●coelacanth三億八千万年の孤独。霧降の滝の岩壁や川治は龍王峡両岸のそそり立つ岩肌をみていると、確かに億単位の年月の経緯に思いをはせることができる。

●coelacanth三億八千万年の孤独。GGがあの「恋空」で有名な「魔法のiらんど」の携帯小説に応募した作品名です。ぜひ読んでみてください。「goo」ですと書きなれているのですが、オクメンもなく参加したこのサイトはみなさん若いひとばかり。ヨロシクネ。などとオドケテみたところで、浮いてる感じはいなめない。

●そこへきてGG初のなんと恋愛小説ときている。書いていて楽しかった。でも、そこはほら吸血鬼作家、まちがいなくでます、日光の吸血鬼。吸血鬼と黒髪、榊、麻耶族との戦いの話がバックにながれています。

●恋愛が主旋律なので現在大問題になっている「大麻汚染」についても書いているのですが。このほうは、ほんのちょっぴり麻薬捜査官がでてくるていどです。

●北海道で学生がどうやら大麻を乾燥させていたらしい、製造していたらしい、といまテレビで報じています。

●次回のこの作品の第二部では大麻汚染を主題に据えて書いてみたいなどと思っています。

●わたしは、なにせ、大麻卸販売と堂々と名刺に刷って営業ができた唯一の生き残りではないかと思います。

●もちろん葉っぱではありません。大麻の茎からとる鹿沼大麻の販売を代々家業としてきました。

●家業では食って行けず、とうの昔に廃業しました。それから学習塾。これも現在大手塾においこまれ風前の灯。これから作家として三度目のカムバックをめざしているGGです。

●coelacanth三億八千万年の孤独のことをあれこれ考えながら、すこぶる元気なカミサンのあとにしたがつて龍王峡の対岸の山を散策してきました。

       

       

       



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吸血鬼の故郷  麻屋与志夫

2008-11-01 15:51:34 | Weblog
門前には長刀の林ができていた。
鬨の声をあげている。
ひさしく戦うことを忘れていた。
昂奮している。   
あるいは門倉を略取されていきり立っている。
抑止しなければ、女たちは勇み立ちこのまま霧に攻め込む。
「さわぐな。全員が疑似音声にまどわされている」
「疑似音声? それって……」
「いかようにもきける音だ。祥代にはどうだ? こころを静めてきいてみれば……」
「まやかしだわ。パパ、こんどはわたしにもただの足音にきける」
「いやちがう。門倉はここだ」
 霧の中から人狼の唸るようなたどたどしい声がした。
 門倉なんかいやしない。
 体をくいちぎられてはいない。
 人狼に咀嚼されてはいなかった。
 だが、生首がなげられた。
 真っ赤に血をふき、脳漿を飛び散らせて椿の胸元に飛び込んだ。
 無念の形相の門倉の顔。
 椿がとりすがった。
「あんたぁ」
 その叫びは苦悶。
  夫の生首をかかえて悲しみと怒りに痙攣する。
 体ががくがくふるえている。
 惨い、むごい、ムゴイ。

 ジャンバー男が霧の中から現れた。
 鉤爪から血がぼたぼたとしたたっている。
 にたにた人狼がわらっている。
 不気味に嘲笑。
「ボス、かかりませんでしたね」
 幻音でわたしたちを霧の中に誘いこみ、門倉のように首をはねる。
それからゆっくり体の肉をくいちぎり咀嚼する作戦だったのだ。
 灰色の体毛におおわれた巨大な人狼がそこにはいた。  
 いかにもボス狼だ。  
 ここにもきれいな歯並びをした一族がいる。
 完璧な歯並び……犬歯がにょきっと下唇まで伸びて……。
 大きな肢体をした精悍な感じだ。 
 まだ二足で起立している。

 あのまま霧の中へでれば、わたしたちも襲われていた。
被害は甚大だった。


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