「ボスと呼ぶな。犬飼新造だ」
「石裂豪だ」
「豪傑というタイプではないな」
「この男は、石裂屋敷の入り婿です。九尾の血はひいていません」
「それで幻の音にもひっかからなかったのか」
背後で車のエンジン音が起きた。
美智子がヘッドライトをつけたクルマで人狼の群れにつつこんだ。
「ヒロシぬかるな」
人狼のボス犬飼がジャンパ男のヒロシに叫ぶ。
「ヒロシです」
人狼がキメゼリフをはく。
12
屋敷の上空で、霧の街の空で冬の雷鳴がとどろいた。
霧は濃くなるばかりだ。
ねばい霧は寒風に吹き流されることもない。
さきほどからの、争いで飛び散った血を含んでいる。
血の臭。
生臭い臭。
たしかに生存している証しである血が流され過ぎている。
霧に赤い色がついている。
錯覚ではない。
たしかに赤い霧だ。
粘つく。
粘性の霧が体にねばりついてくる。
血の成分がふくまれているからなのだ。
その霧の内側に消えた美智子の車を追って門を離れる。
前方の霧の中で車輪のスキット音がした。
これは幻聴ではない。
ガオっと人狼が咆哮している。
街のヒトがパーカーのフードをかぶっている。
その闇のなかで目が青く光っている。
みんな短足になっている。
手も縮んでいる。
腰のあたりに段ができ、二足歩行が困難な感じだ。
いまにも狼となって歩き出しそうだ。
街が一夜にして、人狼にのっとられてしまったのか。
街のヒトがみんな人狼に変身したのか‼
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「豪傑というタイプではないな」
「この男は、石裂屋敷の入り婿です。九尾の血はひいていません」
「それで幻の音にもひっかからなかったのか」
背後で車のエンジン音が起きた。
美智子がヘッドライトをつけたクルマで人狼の群れにつつこんだ。
「ヒロシぬかるな」
人狼のボス犬飼がジャンパ男のヒロシに叫ぶ。
「ヒロシです」
人狼がキメゼリフをはく。
12
屋敷の上空で、霧の街の空で冬の雷鳴がとどろいた。
霧は濃くなるばかりだ。
ねばい霧は寒風に吹き流されることもない。
さきほどからの、争いで飛び散った血を含んでいる。
血の臭。
生臭い臭。
たしかに生存している証しである血が流され過ぎている。
霧に赤い色がついている。
錯覚ではない。
たしかに赤い霧だ。
粘つく。
粘性の霧が体にねばりついてくる。
血の成分がふくまれているからなのだ。
その霧の内側に消えた美智子の車を追って門を離れる。
前方の霧の中で車輪のスキット音がした。
これは幻聴ではない。
ガオっと人狼が咆哮している。
街のヒトがパーカーのフードをかぶっている。
その闇のなかで目が青く光っている。
みんな短足になっている。
手も縮んでいる。
腰のあたりに段ができ、二足歩行が困難な感じだ。
いまにも狼となって歩き出しそうだ。
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