田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼の故郷   麻屋与志夫

2008-11-03 10:58:59 | Weblog
たとえひとりでも人狼の牙から逃れようとしている街の人がいれば。

その人のためにわたしは戦う。

わたしたちを千年の長きにわたり生かしつづけてくれたこの街にむくいるために。

たとえ反対されようとも。

わたしは愛する美智子のために祥代のために家族を救うために命をかける。

わたしは、ヒロシの首を切り離した。
もうこいつの顔はみたくない。    

わたしは雄叫びをあげて霧の中へ突入した。
人狼をなぎたおしていた。
襲いかかる人狼へ突進する。
上段にふりかぶった太刀をその首にふりおろす。
人狼の哀れな咆哮。
下から上に薙ぎあげる。
人狼が右に左に倒れていく。

美智子は間合いを詰められていた。     
長刀は間合いをつめられてふところにとびこまれると無用に長物となる。

あぶないところだった。
いちどは跳び退いて間合いをあけ身を沈めて長刀を振り上げた。
犬飼は高く空にジャンプして避けた。  

その態勢で妻の頭上から鉤ぎ爪をながくのばしておそいかかる。

「させるか」

裂帛の気合いをこめわたしは剣を振った。        
間にあわない。 

凄まじい戦慄を覚えた。

妻が人狼の牙に食いちぎられるイメージが一瞬閃いた。

剣をふるいながら妻に体当たりをかました。   
ふるった太刀は犬飼に切り付けた。
手応えはあった。  

妻のいた位置にわたしがいた。
左肩に激痛がきた。    
刃物をつきたてられたようだ。
いやそれ以上の痛み。
肩の肉をごっそりもっていかれた。 

犬飼はあろうことか空中で回転した。
わたしの左肩の肉をさもうまそうに噛みしめている。

「パパ」
「パパ」

妻と娘の声が同時にひびいた。





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