第十九章 麻薬汚染
6
夜気にみみをすます。
バイ人のものと思われる靴音が伝わってくる。
サル彦ジィにシコマレタ。
日光忍者の聴覚だ。
微妙な音のちがいも聴きもらさない。
もう追いかけてくるものはいない。
安堵の胸をなでおろしている。
歩きだしている。
キリコは足音も立てずに走りつづけた。
商売がうまくいかなかった。
また、街頭で客を探している。
コリナイヤツ。
道行く人にそれとなく声をかけている。
客を物色するバイ人。
ひとからひとへと移動をはじめた。
そこに追尾してきたキリコがいた。
バイ人はギョッとする。
凍てつく。
まちがいない。
追いかけてきた男だ。
まちがいなく人間ではあるが。
化け物のような男だ。
「どうしてバイ人なんかになったのよ」
「金のためだろうが」
「麻薬やったために、破滅するひのとかんがえたことないの」
キリコの脳裡には唄子の悲痛な顔がうかんでいた。
「金になれば、なんでもするの」
「ああするね。ひとの生き血だって吸う」
「吸血鬼みたいね」
「おれが、それだ」
低俗な痩せた小男がにわかに膨らんだ。
なんて、軽薄なことばだ。金になればなんでもする。
もうこの世に深みなぞない。
人生の意義なんてかんがえるのは。
ウザイ。
人生に意味などもとめない。
未来は真っ暗だ。
いまだけ楽しければ。
それでいい。
そして快楽だけを。
欲しがる。
待っているものは破滅。
酒の谷唄子のように。
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夜気にみみをすます。
バイ人のものと思われる靴音が伝わってくる。
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日光忍者の聴覚だ。
微妙な音のちがいも聴きもらさない。
もう追いかけてくるものはいない。
安堵の胸をなでおろしている。
歩きだしている。
キリコは足音も立てずに走りつづけた。
商売がうまくいかなかった。
また、街頭で客を探している。
コリナイヤツ。
道行く人にそれとなく声をかけている。
客を物色するバイ人。
ひとからひとへと移動をはじめた。
そこに追尾してきたキリコがいた。
バイ人はギョッとする。
凍てつく。
まちがいない。
追いかけてきた男だ。
まちがいなく人間ではあるが。
化け物のような男だ。
「どうしてバイ人なんかになったのよ」
「金のためだろうが」
「麻薬やったために、破滅するひのとかんがえたことないの」
キリコの脳裡には唄子の悲痛な顔がうかんでいた。
「金になれば、なんでもするの」
「ああするね。ひとの生き血だって吸う」
「吸血鬼みたいね」
「おれが、それだ」
低俗な痩せた小男がにわかに膨らんだ。
なんて、軽薄なことばだ。金になればなんでもする。
もうこの世に深みなぞない。
人生の意義なんてかんがえるのは。
ウザイ。
人生に意味などもとめない。
未来は真っ暗だ。
いまだけ楽しければ。
それでいい。
そして快楽だけを。
欲しがる。
待っているものは破滅。
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