第二十二章 奥霧降高原
5
そこまでだった。
隼人が駆け寄るのが一瞬遅かった。
あんなにいやがっていたオニガミの手がキリコのあごに触れた。
キリコが一瞬ひるんだ。
キリコは金縛りにあったように動きがとまった。
その一瞬のスキをつかれた。
オニガミの鉤爪がキリコの胸に深くつきささった。
「キリコ」
キリコをかばって飛びこんだ隼人。
隼人の左腕にもオニガミの鉤爪が!!!
隼人は右腕だけで、剣をふりおろした。
サル彦ジィの恨み。
黒髪の女たちの積年の怨念。
そして直人の無念。
すべてをこめた剣のひらめき。
王仁の首が中空にまった。
「わたしだめみたいだよ。
……でもこうして隼人の胸で死ねるなんてしあわせだよ。
隼人にだかれて死ねるなんてうれしいよ」
「キリコ。キリコ。まだこれからだ。まだ敵はいる」
「隼人といっしょに戦えてうれしかった……」
「まだこれからだ、キリコがいなかったらぼくはだれとチームをくめばいいのだ」
「だれか探さっせ……。さがさっせ。サガサッセ」
探さっせ――探しなさいよ。なんとやさしい方言だろう。
「美智子さんと隼人のこと守りつづけたかった。ゴメンね」
「キリコ。これくらいの傷で黒髪の女が弱音をはくな。キリコ、キリコ。しっかりしろ」
「隼人にだかれて死ねるなんておもわなかった。うれしいよ……」
意識がモウロウとしている。
おなじことばをなんどもくりかえしていたが……。
古川記念病院の直人と同じ部屋。
三年前に直人が死んでいった病室だ。
同じベッドに隼人が寝ていた。
「直人! 直人!! しっかりして」
東京からとんできた美智子。
隼人にすがりついてから、われにかえった。
「ゴメン。隼人、だいじょうぶ」
「あまり、だいじょうぶではないみたい。霊体装甲がなかったら……」
「キリコ。キリコさんは?」
頭をやっと横にふることで、隼人は応えた。
黒髪の女たちをひとりも助けることができなかった。
オニガミは黒髪の女を根絶やしにしたのだ。
オニガミは半地下の巣窟に彼女たちを追いつめた。
麻薬の精製所もろとも彼女たちを爆破した。
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あんなにいやがっていたオニガミの手がキリコのあごに触れた。
キリコが一瞬ひるんだ。
キリコは金縛りにあったように動きがとまった。
その一瞬のスキをつかれた。
オニガミの鉤爪がキリコの胸に深くつきささった。
「キリコ」
キリコをかばって飛びこんだ隼人。
隼人の左腕にもオニガミの鉤爪が!!!
隼人は右腕だけで、剣をふりおろした。
サル彦ジィの恨み。
黒髪の女たちの積年の怨念。
そして直人の無念。
すべてをこめた剣のひらめき。
王仁の首が中空にまった。
「わたしだめみたいだよ。
……でもこうして隼人の胸で死ねるなんてしあわせだよ。
隼人にだかれて死ねるなんてうれしいよ」
「キリコ。キリコ。まだこれからだ。まだ敵はいる」
「隼人といっしょに戦えてうれしかった……」
「まだこれからだ、キリコがいなかったらぼくはだれとチームをくめばいいのだ」
「だれか探さっせ……。さがさっせ。サガサッセ」
探さっせ――探しなさいよ。なんとやさしい方言だろう。
「美智子さんと隼人のこと守りつづけたかった。ゴメンね」
「キリコ。これくらいの傷で黒髪の女が弱音をはくな。キリコ、キリコ。しっかりしろ」
「隼人にだかれて死ねるなんておもわなかった。うれしいよ……」
意識がモウロウとしている。
おなじことばをなんどもくりかえしていたが……。
古川記念病院の直人と同じ部屋。
三年前に直人が死んでいった病室だ。
同じベッドに隼人が寝ていた。
「直人! 直人!! しっかりして」
東京からとんできた美智子。
隼人にすがりついてから、われにかえった。
「ゴメン。隼人、だいじょうぶ」
「あまり、だいじょうぶではないみたい。霊体装甲がなかったら……」
「キリコ。キリコさんは?」
頭をやっと横にふることで、隼人は応えた。
黒髪の女たちをひとりも助けることができなかった。
オニガミは黒髪の女を根絶やしにしたのだ。
オニガミは半地下の巣窟に彼女たちを追いつめた。
麻薬の精製所もろとも彼女たちを爆破した。
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