第二十二章 奥霧降高原
3
「どんな栽培方法でも採用できるわよ。
設備にはいくらでも金をかけられる。
巨万の富をもたらすのだから」
キリコがじぶんを納得させるようにつぶやく。
キリコはそこで働かされていた母たちをおもっていた。
そこで強制的に働かされていた黒髪族のおんなたち。
おかあさん、生きていた。
おかあさん、あいたかった。
おかあさん、仇はうつから。
おかあさん、恨みははらすから。
長いこと麻薬Gメンが追ってきた流通経路。
やはり日本に畑があった。
それも――霧降高原の奥に栽培地があった。
むろん精製工場もある。
まちがいない。
ドクターヘリが見えくなった。
だが、東京の方角からヘリの影が現われた。
キリコは操縦席で隼人に状況を説明する。
もう泣き顔は消えている。
「自衛隊の、百子のお父さんたちの部隊がきてくれる。
兄が出動依頼したの」
それほど巨大な敵なのだ。
背後からヘリがついてくる。
霧降の滝が眼下に見える。
行く手の上空で炎が上がった。
少し遅れて銃声。
発砲音がする。
「福島空港から飛び立ったヘリよ。
こちらの指示を待つはずなのに」
「機銃掃射している。
敵が地上から攻撃したので対抗しているのだ」
ロケットランチャらしい。
煙と炎のノロを引いて上空を飛び、ヘリを狙い撃ちにしている。
背後からついてきていたヘリがスピードを上げた。
攻撃ヘリは既に地上の敵が射程圏内にはいったのだろう。
バリバリバリと銃声をひびかせている。
キリコは戦闘場面から少し離れた丘の影にへりを降下させた。
地上はいたるところで薄い霧が渦を巻いていた。
キリコにとっては故郷の霧だ。
霧を透視する能力があるらしい。
隼人を誘導する。
ぐいぐい前にすすむ。
木立をよけて進む。
枝を避けて腰を落と。
森をぬけた。
「うわあ、きれい」
キリコが現況からは不謹慎な歓声を上げた。
ケシの花畑だった。
人口の太陽のような光の塔に畑は照らされていた。
上空に空はない。
巨大なシードルにおおわれているのだ。
森をぬけた。
いつの間にか人工の光に照らされたケシ畑に迷いこんでいた。
わきに粗末な木造の小屋。
キリコが近づくとワッと女たちがとびだしてきた。
「キリコだ。キリコちゃんでしょう」
拉致されていたキリコの同族の女性たちだった。
「やっぱりきてくれたのね。
だれかわたしたちの花びら通信に気づいてくれると待っていた」
黒髪の女たちは、唯一つ彼女たちにできるやりかたで。
ケシの花をオニガミの隙をみて、川に流していたのだ。
美しいケシの花畑だ。
日本で栽培されているとは。
美しいものには近づかないほうがいい。
直人の残した言葉を隼人は思いだしていた。
直人は今日あることを予感していたのだろう。
いや、幻視したのだ。
直人には見えていたのだ。
その能力を恐れた王仁の攻撃をうけたのだ。
彼らの罠にかかって崖から転落したのだ。
のたうつ木の根に足を絡めとられた。
そして死の世界に落ちていった。
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「どんな栽培方法でも採用できるわよ。
設備にはいくらでも金をかけられる。
巨万の富をもたらすのだから」
キリコがじぶんを納得させるようにつぶやく。
キリコはそこで働かされていた母たちをおもっていた。
そこで強制的に働かされていた黒髪族のおんなたち。
おかあさん、生きていた。
おかあさん、あいたかった。
おかあさん、仇はうつから。
おかあさん、恨みははらすから。
長いこと麻薬Gメンが追ってきた流通経路。
やはり日本に畑があった。
それも――霧降高原の奥に栽培地があった。
むろん精製工場もある。
まちがいない。
ドクターヘリが見えくなった。
だが、東京の方角からヘリの影が現われた。
キリコは操縦席で隼人に状況を説明する。
もう泣き顔は消えている。
「自衛隊の、百子のお父さんたちの部隊がきてくれる。
兄が出動依頼したの」
それほど巨大な敵なのだ。
背後からヘリがついてくる。
霧降の滝が眼下に見える。
行く手の上空で炎が上がった。
少し遅れて銃声。
発砲音がする。
「福島空港から飛び立ったヘリよ。
こちらの指示を待つはずなのに」
「機銃掃射している。
敵が地上から攻撃したので対抗しているのだ」
ロケットランチャらしい。
煙と炎のノロを引いて上空を飛び、ヘリを狙い撃ちにしている。
背後からついてきていたヘリがスピードを上げた。
攻撃ヘリは既に地上の敵が射程圏内にはいったのだろう。
バリバリバリと銃声をひびかせている。
キリコは戦闘場面から少し離れた丘の影にへりを降下させた。
地上はいたるところで薄い霧が渦を巻いていた。
キリコにとっては故郷の霧だ。
霧を透視する能力があるらしい。
隼人を誘導する。
ぐいぐい前にすすむ。
木立をよけて進む。
枝を避けて腰を落と。
森をぬけた。
「うわあ、きれい」
キリコが現況からは不謹慎な歓声を上げた。
ケシの花畑だった。
人口の太陽のような光の塔に畑は照らされていた。
上空に空はない。
巨大なシードルにおおわれているのだ。
森をぬけた。
いつの間にか人工の光に照らされたケシ畑に迷いこんでいた。
わきに粗末な木造の小屋。
キリコが近づくとワッと女たちがとびだしてきた。
「キリコだ。キリコちゃんでしょう」
拉致されていたキリコの同族の女性たちだった。
「やっぱりきてくれたのね。
だれかわたしたちの花びら通信に気づいてくれると待っていた」
黒髪の女たちは、唯一つ彼女たちにできるやりかたで。
ケシの花をオニガミの隙をみて、川に流していたのだ。
美しいケシの花畑だ。
日本で栽培されているとは。
美しいものには近づかないほうがいい。
直人の残した言葉を隼人は思いだしていた。
直人は今日あることを予感していたのだろう。
いや、幻視したのだ。
直人には見えていたのだ。
その能力を恐れた王仁の攻撃をうけたのだ。
彼らの罠にかかって崖から転落したのだ。
のたうつ木の根に足を絡めとられた。
そして死の世界に落ちていった。
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