田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

バラの花明り/麻屋与志夫

2011-06-09 11:37:28 | Weblog
6月9日 木曜日
ブログです。

●花明り。
 夜の闇でも、桜の花が咲き乱れ、ほのかに明るい感じ。
 満開の桜の花のかもしだす華やかな、儚い明かり。
 万葉のころは、花といえば、梅。
 いまでは、花は桜。

●塾の最後の授業がおわった。
 門をしめるために庭におりたった。
 教室の前、庭の西の隅がぼうっと朧にかすんでいる。
 ほの明かり。
 梅雨時。
 夜空は曇り。

●カミサンが丹精込めて世話をしているバラ。
 バラの花を愛でるためにまいにちワクワクして暮らしている。
 カミサンの誇る白バラ。
 アイスバーク。
 シテイオブヨーク。
 ドミニック・ロワゾ―。
 と……武骨、無風流のわたしもバラの名前をおぼえた。
 その白いバラがいっせいに咲いている。
 初めてのツルアイスバーク。
 透明感のある白い花びらで梅雨時の鬱陶しい宵闇を彩っている。

●わたしたちには、花といえばバラ。
 されば、バラの花明り。
 という言葉を使わせてもらう。
 
 桜の花明りは濃艶。
 バラの花明りは清楚。
 
 冷やかな透明感のある明るさ。

●門扉を閉めるのも忘れて、しばしバラの花明りにみとれた。

    アイスバーグ
      

      

    シティオブヨーク
      

      

    右ドミニクロワゾー  左アイスバーグ
        

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わたしダメみたい/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-09 05:55:04 | Weblog

第二十章 酒の谷唄子

1 
 
「美智子。わたしだめみたい」
自由が丘の自宅。
美智子の部屋。
夜。
デスプレイに表示された発信者は唄ッピー。

いまごろなにかしら。
不安はてきちゅうした。
拉致されたあとのPTSD。
唄子はまだ立ち直っていない。
唄子のせっぱつまった声。低く、かすれて、途切れがち……。

「なにいうの。センパイ。唄子さん。そんなこといわないで、唄子」
「いままで……いろいろ世話になったわ。ありがとう」
「唄子!」

返事はもどってこない。
遠くですすり泣きの声がした。
まだ……携帯を手にしている。
電話は切られたわけではなかった。

「唄子。唄子。唄子。返事して。電話にでて。おねがいだから、電話にでて」
唄子が泣いている。
すすり泣く声がきこえる。
かすかに断続して携帯の彼方でする。
携帯の奥でする。
唄子が泣いている。
どうかしたのだ。
なにかしようとしている。
なにか不吉な予感。
なにか……死ぬことでもかんがえているような――胸騒ぎ。
かすかに、かすかに猫の鳴き声がする。
鈴が鳴っている。
サイベリアンのモーが鳴いているのだ。
猫の鳴き声は同じようにしかきこえない。
でも、
あの鈴の音ははわたしが神戸の土産にかってきてあげたものだ。
土鈴のやさしい音だ。
金の鈴とちがいこころに沁みるやさしい音がする。
そして、美智子は恐怖にふるえだした。
あの猫のモーちゃんは、唄子の部屋にはいないはずだ。
解雇されたとき。
餌代にも事欠くだろうからと、
「バンビ」の事務所にひきとってもらった。
なぜそんなに、お金がないの。
夫の健一に貢いでしまったらしい。
っうか、
浪費癖のある彼だから……。
唄子も一緒に遊んでだのだから……。
まあ、
しかたないのかな。
クラブて絶叫していた。
両腕をあげて。
手をふって。
踊りまくっていた。
麻薬やっていた。
それを暗示する映像。
TVなんどもながされていた。
くりかえされる同じ映像。
麻薬常習者と刻印を押されているような映像。
唄子、かわいそう。
苦しんでいる。
まぁしかたないのかな。
夫婦のことはわたしにはわからない。
唄子が社長にひきとってもらった。
じゃあ、
唄子は社長室にいるの。
事務所にいるの。
そんなことはない。
連れ帰ったのだろう。
どうせなら……。
死ぬのならモウと……。
ダメ!!
どこにいるともわからない。
唄子にきこえるように。
絶叫した。
「やめて」
美智子は絶叫していた。
「やめて!!」


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