5.攻撃
加納は赤坂から数kmの工事資材置き場に8台の車とその乗員8名を前にして訓示を垂れた。
「主拳銃!確認!」
すると八名の各々の会社名のついた作業服の中から掌の中に隠れるような小型のリボルバー銃を取り出した。
口径22inch弾数8、典型的な安物の護身用銃である。
「繰り返すが、リボルバーは不発があっても引き金を引けば、次弾が撃てる。また連発するようなら、副拳銃を使用する。次!副拳銃」
主拳銃を元の胸元に隠したら、次は尻のポケットから拳銃を出してきた。
デトニクスである。連発式オートマチック拳銃9mm口径装弾数7。
「初段充填確認」
するとオートマチック銃の上側の部分を3mmほど引いて中を見る。
弾丸を確認すると、元に戻す。
「続いて、予備マガジンを確認!」
反対の尻のポケットからマガジンを取り出した。
「オートマチックで、初段が不発の場合、予備マガジンを使うように、そうでないなら、手に持っているマガジンの初段を抜き出して、再度装填する。それがダメなら逃げろ。」
メンバーの一人中野が手を上げて質問する。
「捕まったらどうするんですか?」
「捕まったら、全て私の名前を出して脅迫して命令された、細かい内容は知らない。金も出してくれるのでしょうがなく手伝った。そうでないと殺されると言われた。とすればいい。実は全員の名義で500万円がすでに振り込まれている。警察が勝手に見つけてくれるだろうさ。知らぬ存ぜぬ、そして、自分の出自を言えば、主義者とは思わんだろう。上手くすると有期刑、さもなくば無期懲役だが10年で出られる。それと車の中にあるものは知らないと通せ!何れも臨機応変にな!」
最後に加納は敬礼し、皆もそれに倣った。
「環境は想定以上のもので、成功を確信している。なに、お前たちは十分に優秀で有能だ。期待に応えろ!だが緊張はするな!しかし甘く見るな?」
敬礼を終わると加納は
「現場は、例の如く、揖保元や間抜野郎に抗議に来る連中が多いが「#ゴルゴじゅうぞう」を名乗れば退避するだろう。ツイートをアップする。」
「了解!」
「各員の幸運を祈る!」
他方別働隊が、既にTVSに先乗りしていた。
よくある保安院との小競り合いである。
「それ!正式な書面て聞いてきたんだけど?それで入れないの?どうすんのよ?」
「いやぁ〜、この振り出し主の鎌田部長が出張中でねぇ〜。」
「本人の署名と、印鑑って聞いたんだけど、それを信用しないってのはねぇ〜?オタク、仕事やってんの?」
「本人確認が出来ないんだよぉ〜。」
「あんた、このIT時代に馬鹿かぁ?この書面とかも、何かチップ入れて、それで判別している所ばっかりだよ?その努力をしないで、作業工程潰すの?ふざけんなよ!大体、今日持ってくる羽目は、そっちがゴリ押ししたスケジュールだぜ!俺だってデート中止で、どれだけ損害受けたと思ってんだよ!ふざけんなよ!加えて言うと、2階と3階の書棚の取り出しと防震工事!は、書類が無くならないように引っ張り出しを明日からするって話だった。それが、当日になってのっそり入れて、やるのか?で、部長さんの休暇は?」
「水曜日だったと思うが…」
「話にならない。この書棚の工事は火曜日がケツなんだぜ?一昨日来やがれってのは、正にこいつを言うな。で、警備の仕事ってのは邪魔するのが目的なのかい?書類まで出している人間を!」
「シゲさん、良いじゃないか…、そこの若いの?工事は何処までやるのかい?」
「こいつの運びこみと、不倒壊処置と、まぁ工具が入っているんで、中身のリストを表面に貼るぐらいかな?」
「なら良いじゃないか?書類もあるし、今日は人も少なければ、問題も少ないだろう?ねぇ?その形だよね?なら、防火癖には当たらないようにしてくれれば、それで構わんよ。但し、一応氏名と電話番号、会社名を書いておいてくれないか?」
「会社名と番号は書類に書いてあるでしょう?」
「手続きなんだよ。それはやっても良いんじゃないか?」
「へいへい、小西太平、真垣豪、ん〜と会社の漢字が面倒なんだよな?蓬莱工業(合)…、コレでいいだろう?」
「じゃぁ持ってきた敷きマット、汚れてないよね?汚れていたら、拭いてもらうからね。」
「大丈夫ッスよ!」
そう言うと
「シゲって爺、全くイライラしやがる。」
「いいじゃねぇか…。取り敢えず入れた。オマエは3階な。」
そう言うと搬送用エレベーターに書棚を入れた。
トミファー事務所では、大問題が持ち上がっていた。
斉藤伊礼奈からメールで連絡が入ったが、通話には出ない。
代表の埜田和(のだかずみ)は予てより、スキャンダルの山を恐れていた。
だがマスゴミはトミファーを支持している。
大丈夫とは思うが…、一体誰が?と思っていた。
「自民党か!公明党か!いやいや緡死ん盗、あの印象操作しか出来ないゲスの売国奴の集団なら有り得る。いやきっとそうだろう!」
そして、流石にMS、IBM、オラクル、アマゾンなどの手練が居て、関係者を呼んで、スクリーニングしたら、盗聴・盗撮カメラの存在を確認、保存してある情報を見つけた。
ただし、最新の情報以外は消されていた。
カメラの情報はトミファーの代表室に送られた。
斉藤伊礼奈は、誰でも、これがマリファナか?と思える異様な匂いのする目黒の貸しビルの一つに捨てられていた。
股間を隠す部分が開いているボディースーツと網タイツ、バッチリされた化粧、そして、股間と顔に白い液体が見られる。
秘書の木村は、取り敢えず、コートをかける前に、白い液体を拭き取ろうとしてティッシュで拭うと、あれ?と変な感じを受けた。
あろうことか、その白い液体を舐めようとした。
「ばかか!ここには変態しか居ないのか!」
あまりの怒号にヘッドセットをつけた木村も驚き、思わず頭を下げたが、
「すみません、ですが、これは練乳です、このティシュー持って行きますが、練乳です。精液には見えたでしょうが、生臭い匂いはなかったから、それに手触りが違います。」
「印象操作か…。糞!チョングソ・マスゴミ・緡死ん盗の得意技だ!全く油断も隙もない!」
机に両手を置いて体の重さとプレッシャーに耐えるような、形を取った。
「憶測だけでは、何にもならない。兎に角、換気、それと、そこに薬物とかタバコの類が無い様に処理させよう。君の立派すぎるスーツはマイナスだ。後で人を送る」
「ハイ」
「ここは私が、手の者を出します。」
「おお、粟林君、君はコンピューターの出来る人だったね。」
「ええ、凄く出来ます。まぁ年寄りの、マリファナを知らないような爺さんたちを送りましょうか?}
「そのへんのデリカシーは期待できる。任せるよ。助かったよ、君みたいな人間が居て。」