10.「硝酸アルミニウム始めました」なう
ハッシュタグ「#ゴルゴじゅうぞう」に、このツイートが載った。
今回の問題に関して、警視庁には「TVSナパームテロ捜査本部兼対策室」が立ち上げられた。
その時点で、マスゴミの勢いは凄かったが、TVSの記者はコソコソしていた。
刑事の中には
「ほぉ!この事件だけは『自称:報道』するのかい?」
と嫌味を言う者も居た。
だが彼らの懸念は、マスゴミの「トップ取り」で「情報撹乱」するのは確実であった。
そして、本来の『#ゴルゴじゅうぞう』は、それを「茶化す」のには「天才的」だった。
多分、偽情報を『自称:報道』させ、その後事実をネットで流し「赤っ恥」をかかせることが目的だった。
だが、それも問題だが、この手の重大犯罪には、犯人以外の「懸念材料」が内部に存在する。
先ず「捜査権」は「警視庁:第一課強行犯係」と新設の「テロ対策課」の合同なのは、決まっていたが、
警視庁は、日本一の警察であり、捜査方針は刑事課長か、その前後の関係者にかかっているが、
こうまで社会性と功績の問題が出ると警視庁やもっと上の法務省が出て来る。
また警視庁は、都庁の一部署である。その上には都知事が、最高権威者として存在している。
これが先ず「都政を国政の踏み台」としか考えていないし、トミファーと言う「厄介者」を用意している。
揃いも揃って「功績」を求めている。だが、成果を出しても1/4とする気は更々無い事もはっきりしている。
「こりゃ…、荒れるかな?」
とは松村刑事一課長である。
名前通り、彼の要望は某ものまね芸人にそっくりであるが、手腕と経験は定評がある。
隣には西田管理官が居た。
「石原さんの時には口煩くってのは、無かったので、あれは天国だったんですね…」
「騒乱の地に、平安の心を持たんとな…。」
と大会議室の上座に二人は座った。
だが、その彼らの目に見覚えのない姿が映った。
それはトミファーから派遣されてきた「えりぃと」だった。
須田尚史と谷口靖である。
須田は48歳だが、議員歴23年のベテランである。谷口は東大出のコーネル大学ロースクール出身でアメリカの法律事務所所属の国際弁護士である。
「ありゃぁ〜。東大出のアメリカ育ちは、スーツから違うね?アレはイタリア製だ…」
とはあきる野署から呼び出された御崎警部補のボヤキだった。その後ろから柔道で鍛えた重量級の背中をドンと突かれる。
「久しぶり…、御崎、元気だった?」
打って変わって、痩せぎすのノッポが似たりとした顔を見せる。
「磯川さん…、お呼ばれで?」
「府中でチョングソのケツを追って叩きだしてやっている所だった。…っで、感じはどうだ?」
「トミファーが『御挨拶』って感じで…。」
「西川管理官が熟れてきた所で、別のトンガリが出てきたか?」
「ちっちゃな頃からエリートで、大学出たときゃ天才と、アメリカ行っては、国際人、何故かは知らぬがトミファーちゃん」
「わかってくれとは言わないが、そっちの理屈は違うのよ、こーこはこーこは日本よ!グダグダ捜査の種になる」
と「ギザギザハートの子守唄」でぼやきを決めてみた。
すると
「おい!磯川、何時までもガキみたいな事ホザクんじゃねぇ〜。」
とは鑑識の阪さんである。磯川も頭が上がらないベテランだ。
「やっぱり、来てましたか?」
「オマエのマニアックな経歴が役に立ちそうだな?」
「また、そういう嫌味言う…」
磯川は工学部出の男で、理科系の目を持っている。
「で軍事マニアの磯川君はどう思う?」
「主観を言えば、相手は、こなれた嫌な奴でしょう。ISとかタリバンとかアルカイーダなんかと違って、ハイテクバリバリだけど、今の時点でナパームってのは、どうなんだか?」
「もっとやれると?」
「TVSの攻撃は人力優先ですが、色々監視カメラが仕込まれていると思われます。」
「何故そう言える?」
そう問う阪に、磯川はスマホを見せた。
「何だ?ちょっと違うなぁ、オマエのスマホ」
「FireFoxOSって奴です。コレにしたのは、このアプリの為でして…」
と見せたのはリストと左に数値とアルファベットが並ぶ。
「何だいこりゃ?」
「無線LANの解析ソフトです。現場の無線LANを取り敢えず、全部分析している筈です。」
「凄いなぁ〜。」
「凄いのはプログラマ、俺は使うだけです。」
「で?何が肝なんだ?」
「370件の無線LANの信号がありましたが、使途不明の無線LANが27件。内、22件がUDPでした。」
「何なんだ?」
「UDPは無線で動画を送ったりテレビ電話しているって事です。」
「…っで裏は?」
「総務省に依頼しています。まぁテロ準が通ったから、直ぐに来るでしょう。」
「そうか…」
と阪が言う頃、西田管理官の怒鳴り声が響く。
「こら!磯川だろう!オマエが来ると何時もそうだ!会議で状況を説明しろ!」
「スンマセーン!」
と素直に謝ったが、
「早速コレだ?で、トミファーちゃんは?」
「睨んでいますよ。全く、余計な労力だ」
と御崎は諦め気味に答えた。
だが、これから、捜査会議である。