PAPちゃんねるへようこそ!

PAP-JAPAN代表、川井眞理のお仕事(以外もてんこ盛り)日誌

「希望学」の教えるもの

2009-09-14 | その他
夕方見たTVで「希望学」という学問分野が4年前に立ち上がったことを知った。
学会のメンバーは東大の法律や心理、労働分野など各分野の先生たち。
発起人は「ニート」を日本へ紹介したことでも知られる、労働経済が専門の玄田有史先生だ。

TVでは4年かけて学会が調査した希望についての結果を報告しており、いくつか興味深いものがあった。
(人生に)希望を持つことが出来る人についての調査で、年収1000万円以上の人は300万円以下の人よりも希望を持っている割合が高いという。
大学・大学院卒の人は、中卒・高卒の人よりも希望を持っている割合が高い。
そして友人や知合いが多い人は、少なかったり孤独を感じていたりする人に比べて希望を持っている割合が高い。

この辺までは常識で考えても゛選択肢の多さ゛から、そうでない人に比べて人生が多少生き易くなっているだろうことが予想される。
心理学から見ると「人は(仕事を)やってもやっても先が見えないと希望をなくし、一方で(仕事の)先が見えても希望をなくす」という。
まこと、人とは贅沢で厄介な生き物なのだ。

ところが地域という視点で見ると、貯蓄率・持ち家率が日本で最も高い福井県民で将来に希望を持っている人の割合は全国第44位という低さだったという。
(個人的には「危機感があるからこそ貯蓄額が高く、持ち家率が高いのではないか?」と思う。社会保障が整っていれば個人が頑張って備えしなくても済むからだ)

玄田先生は言う。
「貯蓄や持ち家という、一般に人が憧れるものを沢山持っているからといって人が希望を持てるとは限らないことをこの調査は教えてくれる。
人が希望を持つためには物語が必要なのではないか。
人生はうまくいくことばかりではなく、挫折や無駄も多い。
それらを乗り越えて、自分ならではの価値観を持ち、それに邁進することが出来て、初めて人は希望を持てるようになるのではないか」と。

1989年まで鉄鋼の町として栄えた釜石市も町の縮小を経て、今規模は小さくなったものの若い世代のUターン組を迎えて確実に元気を取り戻しつつあるという。
若い世代が戻ってきた大きな理由として、地元市役所が企業誘致を行い、雇用の確保に奔走してきた経緯がある。

なぜ企業誘致に成功できたのか?
かつて工業都市として栄えた釜石市の、他地域にはない強みを徹底して活かしたことが希望再生に大きな役割を果たしたという。
ローカルアイデンティティの再構築というそうだ。
(ヒトで言えばパーソナルアイデンティティの再構築だ)

Uターン組の中には地元へ帰って父親のやっていた水産加工?の零細企業を継ぎ、高校時代の後輩との縁で事業を拡大し、発展している事例が紹介されていた。
ごくたまにしか顔を会わさないような、価値観や持つ情報が違う人との緩やかな繋がりをウィークタイズというが、発展のきっかけになったのがこれだったという。

イギリスには人口減社会の中、人口が減るからダメという発想ではなく、発想をコンパクトに変えていくというコンパクトシティという考え方があるそうだ。

玄田先生は町の希望再生のヒントとして、「Uターン組が地域に風を起こす」という表現をしていたが、個人レベルでは苦しい経験を乗り越えるヒントとして、先の水産加工会社社長の言葉を引用、「(自分をわかってくれる人が)3人いれば大丈夫!」とまとめていた。

つまり、希望を持つためには゛棚ぼた゛はあり得ず、一人ひとりが希望を持とうと行動し、それぞれの人が繋がっていくしかない。
挫折、失敗を乗り越えてきた人だけが本当の意味で希望を持っている、つまり希望は挫折や失敗を乗り越えた先にしかないということだ。

「それを模索し、見つけていくべき時代なのでは?」というのが玄田先生の結びの言葉だったが、挫折・失敗の前でベソをかいて引き返すことばかり考えているのが現代人の姿のようにも思える。
乗り越えようと真剣に取り組まないから人生は面白くないし、希望を持てないのだとも言えそうだ。

最新の画像もっと見る