父と母のことを思いだすと
雨のなかで
わんわんと泣きたくなる
親不幸の数々は
父も母ももう亡くなってしまったいま
もうどうしようもないのに
どっちとも再婚同士だった父母
異母兄弟の兄は
ずっといまも行方不明のままで
痴呆症になってからも
その兄のことを案じてた
母との約束はついに果たせないまま
城山三郎氏みたいに戦争末期に
まだ十代で志願兵となった父
いつも酒臭かった父
休みになるといつも
海の見える丘へと
売れもしない唐松を植え続けてた父
ときどきは遠い海を見つめながら
部隊が全滅したニューギニアでの
飢えとの戦いをポツリとポツリ
朝になると
寒さと栄養不足のために失明して
いつまでもいつまでも
「一緒に連れてってくれ!」と叫んでいたい同僚のことや
夜になると原住民の畑へと芋泥棒に行っては
毒矢を射掛けられたこと
津軽海峡でやっと
自決用に肌身離さず持ってきた
手榴弾を荒波に向かって放り投げたこと
幸せだったとか
不幸だったとか
運が良かったとか
悪かったとか
そんなこと
いまさら言っても仕方ないのに
そんなことばっかり
考えてる自分がいる
雨のなかで
濡れそぼりながら
空を見上げるたびに思いだす言葉がある
「お前ならもう大丈夫だ」と
最後に言っていた父のことばと
「幸せになっておくれ」という
母の最後のことば
雨のなかで
わんわんと泣きたくなる
親不幸の数々は
父も母ももう亡くなってしまったいま
もうどうしようもないのに
どっちとも再婚同士だった父母
異母兄弟の兄は
ずっといまも行方不明のままで
痴呆症になってからも
その兄のことを案じてた
母との約束はついに果たせないまま
城山三郎氏みたいに戦争末期に
まだ十代で志願兵となった父
いつも酒臭かった父
休みになるといつも
海の見える丘へと
売れもしない唐松を植え続けてた父
ときどきは遠い海を見つめながら
部隊が全滅したニューギニアでの
飢えとの戦いをポツリとポツリ
朝になると
寒さと栄養不足のために失明して
いつまでもいつまでも
「一緒に連れてってくれ!」と叫んでいたい同僚のことや
夜になると原住民の畑へと芋泥棒に行っては
毒矢を射掛けられたこと
津軽海峡でやっと
自決用に肌身離さず持ってきた
手榴弾を荒波に向かって放り投げたこと
幸せだったとか
不幸だったとか
運が良かったとか
悪かったとか
そんなこと
いまさら言っても仕方ないのに
そんなことばっかり
考えてる自分がいる
雨のなかで
濡れそぼりながら
空を見上げるたびに思いだす言葉がある
「お前ならもう大丈夫だ」と
最後に言っていた父のことばと
「幸せになっておくれ」という
母の最後のことば