先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

脳に電気刺激を与え能力を高めるヘッドホン型デバイス

2019年03月13日 00時13分47秒 | 日記

ギアヘッドフォンと言ったら、何十年前のオーム真理教の洗脳ヘッドフォンを思い起こさせられるが、プロスポーツ界も注目! 脳に電気刺激を与え能力を高めるヘッドホン型デバイスと言うからびっくり。ニューズウィークが紹介していた。

技術改良が進むヘイロー・スポーツのヘッドセット COURTESY HALO

<既に商品化されている「ヘイロー・スポーツ」は、頭蓋を通して電気パルスを伝え、運動能力を改善するヘッドホン型デバイス。神経科学分野で「tES」技術の研究が進む中、こんな「鍛え方」が当たり前になる時代が近付いている>

 

ここはホテルのロビー。私の目の前に置かれたガジェットは見た目はただのヘッドホンだが、内側にいくつもスパイクが付いている。頭皮マッサージ用? いやいや、そうじゃない。

スパイクの先端から頭蓋を通して脳に電気パルスが伝わるのだと、開発に携わったシリコンバレーのベンチャー企業ヘイロー・ニューロサイエンスのダニエル・チャオCEOは説明する。

これを装着すれば50代のオジサン(私のことだ)でも若者のように俊敏に動ける、というのだ。試してみますか──チャオが聞いた。

何とも怪しげな話だが、スキーのアメリカ代表チームやメジャーリーグのいくつかの球団、NFLのドラフト候補にも選ばれた数人のカレッジフットボールの選手らが既に試して、効果を実感しているとか。

驚くべきデータもある。スキージャンプのチームによると、このデバイス「ヘイロー・スポーツ」を装着してトレーニングを行った選手たちは「ジャンプ力」が31%も向上。ヘイローなしで同じトレーニングを行った対照群は18%しか伸びなかったそうだ。

どんな競技でもトップレベルになると選手の実力差はほんのわずか。メダルをつかめるか入賞で終わるか、ちょっとした違いが明暗を分ける。ヘイローを使うことでそのわずかな差を埋められるなら、果たしてこれを使うことはフェアなのか、という疑問も生じる。既に「ニューロ(脳)ドーピング」として待ったをかける動きもある。

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ヘイロー・スポーツは1日30分程度の装着で筋力や持久力が効率よくアップし、運動のパフォーマンスが向上する COURTESY HALO

 

低価格化と小型化で普及狙う

今春発売予定の改良版ヘイロー・スポーツ2の価格は399ドル。電気パルスによるパフォーマンスの改善はまだ研究段階にある技術で、うさんくささも付きまとうが、チャオはヘイローをスマートフォンにおけるアップルのような消費者向けブランドにしたいと考えている。

開発の基礎を成すのは、ここ十数年神経科学の分野で盛んに研究されている経頭蓋電気刺激(tES)と呼ばれる技術だ。電気パルスは厳しいトレーニングと組み合わせることで初めて効果を発揮する。開発チームによると、電気パルスがニューロン(神経細胞)の発火を促すため、競技のテクニックをより効率的に習得できるという。安全性はこれまでのデータで「問題なし」とされているが、使用に当たっては注意も必要だ。

ヘイローを立ち上げる前に、チャオは仲間と共にてんかんの発作を抑える頭蓋内埋め込み型のデバイスを開発し、商品化に成功。ヘイローには著名なベンチャー投資家マーク・アンドリーセンらが資金を提供した。顧問には連邦通信委員会の元委員長リード・ハント、アップルが買収したヘッドホンメーカー、ビーツ・エレクトロニクスの元CEOスーザン・ペイリーが名を連ねている(ヘイローの製品デザインには明らかにビーツのヘッドホンの影響がうかがわれる)。


サマータイム、もはや時代錯誤?

2019年03月13日 00時09分21秒 | 日記

サマータイムにうんざり、米国で廃止の動き。夏・冬時間どちらに合わせるか各州異なる構想、法律の壁回避策も

サマータイム制度は大きな変化の時を迎えているようだ。米国では今、かつてないほど多くの州が時刻の修正をやめる方法を探っている。
( NATIONAL GEOGRAPHIC)
 

 春が近づくたび、スコット・イェイツ氏は憂鬱になる。日が長くなり、気候が暖かくなるのは、イェイツ氏を含む多数の米国民にとって、毎年恒例の難関を乗り越えるべき日が近づいているしるしだからだ。そう、サマータイムの始まりの日に、時計の針を1時間進めなければならないのである。

 時刻を春には進め秋には戻すのは、少々面倒というのみならず、深刻な悪影響をもたらす可能性がある。というのも切り替えの時期は、心臓発作のリスク増大、交通死亡事故の増加、裁判で普段より厳しい刑が言い渡される傾向などが見られるからだ。しかし、多くの企業が利益の観点からサマータイムを支持しているため、このやっかいな制度は米国全土のほとんどの地域で続いている。

「このせいでみんな頭がおかしくなりそうなんです」と話すイェイツ氏は、サマータイム廃止活動家であり非営利企業ケーブルラブスの客員起業家だ。彼は妻のキャシー・イェイツ氏から、文句を言うより行動をとけしかけられ、2014年からサマータイム制度を変えるために活動している。

 長らく、サマータイムを変えようとするのは無駄な努力であるように思われた。しかし、今年になって事態は動いている。多くの州が、定期的に時刻を修正することによる問題を認識し、このクレイジーな制度を廃止しようと共同戦線を張っているのだ。

「やっと着実な流れができてきました」とイェイツ氏は最近の動きについて話す。年を経るごとに関心は高まっており、関連法案は少しずつ成立しつつある。「確実に前進しています」

SOREN WALLJASPER, NG STAFF

サマータイムの歴史

 米国のサマータイムは第一次世界大戦のさなかの1918年、先行して1916年に導入していたドイツに続き、エネルギー節約の試みとして始まった。時計を1時間進めることで、日が出ている時間を最大限に活用するというアイデアだった。(参考記事:「実は冗談が発端、サマータイムの奇妙な歴史」

 第二次世界大戦中は年中ずっとサマータイムとなり、「戦争タイム」との俗名がついた。戦後になると、各州はサマータイムを採用するかどうかやその実施期間を自由に決めていた。そのため米国中にばらばらのタイムゾーンが存在することになり、テレビ局や交通関連機関をはじめとする全国規模の業界は、あちこちで次々に切り替わってゆく時刻に付いていくのに必死だった。

 そこで登場したのが1966年の「統一時間法」という連邦法だ。読んで字のごとく、サマータイムの始まりと終わりを含め、時間を定めるルールを全米で統一するためのものである。その後の修正によって、始まりと終わりの日は数回変更されたが、今もサマータイム制度はこの法律に則っている。

 現在の決まりでは、米国の夏時間の開始日は3月の第2日曜日だ。各地で午前2時になったとき、時計を1時間進めることになっている。終了日は11月の第1日曜日で、各地で午前2時になったとき、今度は時計を1時間遅らせる。11月と3月の間の4カ月ほどは「標準時」と呼ばれる時間に従うことになる。