日経によると、アップルの部品調達先が台湾、中国、日本、アメリカとなっていると報じていた。
アップルは毎年3月をメドに同リストを開示する。組み立てや素材供給など生産全体の98%をカバーする約200社と、取引のある約800の工場などの拠点の所在地も記載。日本経済新聞社が国・地域別の内訳などを分析した。リスト入りは世界レベルの技術と信頼を証明し、電子産業の勢力図も映し出す。
サプライヤーを国・地域別の本社所在地でみると、中国・香港企業は計41社と前年に比べ5社増えた。1位の台湾(46社)に迫り、日本(38社)や米国(37社)を初めて抜いた。そのうち中国企業は30社と12年から3倍に増加した。
一方、本社は海外にあるが中国本土に工場を抱えるサプライヤーも多い。生産拠点別に分析すると、中国は前の年より26カ所多い約380カ所と全体の5割弱を占めた。
スマートフォン(スマホ)のiPhoneのほか、タブレット端末のiPadを始めアップル製品は多くが中国生産だ。世界各地から集めた最新の素材や部品を鴻海(ホンハイ)精密工業など台湾企業の中国工場に集約して組み立て、世界市場に送り出してきた。
ただ中国はかつての安価な生産基地から、高度な現地サプライヤーの集積地に変貌しつつある。台湾経済研究院の邱是芳氏は「中国勢は現地に進出した日台などの企業から技術や生産ラインの管理などのノウハウを吸収し、ライバルとして台頭している」と指摘する。
また、シティ・グループ証券の江沢厚太氏は「スマホの機能が出尽くして進化のスピードが鈍っていることが、(革新よりもコスト面を強みとする)中国企業の増加につながっている可能性がある」と話す。
中国や香港からは、磁性部材を手掛ける中石科技(北京)やスマホのケースや部品を中国で生産する通達集団(香港)などが新たに入った。
台湾は5社減少し、中国勢に侵食された可能性が高い。中国の深圳欧菲光科技(オーフィルムテック)はタッチパネル関連の部品で急成長し、台湾の同業大手、宸鴻光電科技(TPK)のアップル需要を圧迫している。広東省の立訊精密工業(ラックスシェア)も台湾大手からワイヤレスイヤホン「エアーポッズ」の生産需要を奪っている。
日本も5社減少した。コネクタの第一精工、ステンレス板の日新製鋼、リチウム電池部材などを手掛ける戸田工業、LEDの豊田合成などがリストから外れた。
米国は1社の減少にとどまり、拠点数では65拠点と8カ所増えた。アップルは1月、今後5年間に米国内で300億ドル(約3兆3500億円)を投資する計画を発表した。中国依存に批判を強めるトランプ米政権に配慮し、少しでも米国生産を増やそうとする意志がにじむ。
貿易摩擦の激化で足元では「今後は中国からの調達が増えにくい状況になっている」(シティの江沢氏)といい、中国から東南アジアなどに生産地を分散する動きが出ている。ただ今回のリストでは拠点数でインドが8カ所と3増えた以外、アジアでは目立った変化はみられなかった。
台湾の受託生産大手の首脳は「複雑な供給網を必要とするスマホの生産網を移すのは時間がかかる」と話す。保護主義で無理にサプライチェーンを動かす必要に迫られれば、企業は重い負担を強いられそうだ。