サーキューラー経済が最近叫ばれている。製品を世に出したら、そのライフタイム終了後に部品を回収して再利用しようというもの。
かつては大量生産によって、資源高を製品価格へ転嫁することを抑えてきたが、資源価格が高騰するなか、2000年以降の日本の数値からはその限界が見えている。「売って終わり」ではなく、再生・再利用し続けることで価値を最大限に引き出すサーキュラー・エコノミーが求められている。
日本でその牽引力となっているのは、欧州で顕著な環境保護の意識というより、消費者の思考や行動の変化だ。店に並んだ商品の中から選択する「従順な購買」から事前にネットなどで欲しい物を調査する「わがままな購買」へ、そして現在は「わがままな利用」へと消費行動が変わってきている。必要なときに使うことができれば買わなくてもいい。人々は物の所有より、利用したときの「成果」に敏感になっている。
日本が強みとしてきたモノづくりでは、優れた製品を作ることが競合との差別化要素だった。だが消費者が使いたいときだけサービスを提供する形になれば、求められる品質も変わる。例えば車1台当たりの稼働率が上がればより耐久性が求められ、逆に一利用者が短時間乗るだけならシートの座り心地は少し下がってもいいかもしれない。
地方創生にもつながり得る
難しいのは従来型のビジネスモデルで成功している会社ほど、サーキュラー・エコノミーでは既存の事業計画との齟齬が生じること。シェアリングが進めば車の販売数は減り、例えば100台売れていたものが20台になる可能性もある。その代わり、ニーズが変わらなければ売れた車の稼働率は5倍になるので、点検・整備などを含めた売り上げのタネは出てくるだろう。
大企業よりスタートアップのほうがそうした市場に入っていきやすいことは確かで、フリマアプリのメルカリやカーシェアアプリのエニカなどは典型的なシェアリングの成功事例だろう
今の経済システムには欠陥があり、地球の資源は地球と人類の生存を脅かす速度で消費されている。19世紀に産業革命が進んで以来、人間は使い捨ての「直線型経済」に慣れてきた。「作って、売って、使って、廃棄する」経済だ。
こんなことを続けるのは愚の骨頂だ、とマッカーサーは言う。私たちは今後50年で銅や銀、スズ、亜鉛といった資源を枯渇させ、気候変動を加速させ、ごみ処理場を満杯にし、プラスチックで海を汚染し尽くす可能性がある。いま求められるのは、全く新しい視点からのアプローチだ。
部品の85%を新製品に再利用
マッカーサーとサーキュラー・エコノミーの支持者たちは、この難題に対処できると考える。10月22〜23日、日本の環境省とフィンランドの基金が共催する「第2回世界循環経済フォーラム」が横浜で各国政府や自治体、NGOなどの関係者を集めて開かれる。メッセージは「直線型モデルはもう古い、これからは循環型だ」。
では新モデルの中身とは? まずは、製品を繰り返し利用できるものにすることが挙げられる。原材料が天然素材または「生分解性」の物質なら廃棄しても構わない。しかし「産業技術系の」物質は転用し、再使用しなければならない(生産したメーカーが再使用にも責任を持つのが理想的だ)。今では「閉鎖ループ」という言葉を目にする機会も増えてきた。