多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

小池都政と都民ファーストの動向をどう見るか

2017年06月06日 | 集会報告

都民ファーストの会は6月23日の都議選告示を前に、6月1日に総決起集会を開催した。そしていよいよ小池百合子都知事が代表に就任し48人の公認予定候補を発表した。都民ファーストが都議選の台風の目になっていることは間違いない。公認・推薦予定候補のなかには、自民・民進の現職や元職の都議、区議・市議がかなりいる。しかしいったいどんな政党なのかまだよくわからない。
6月3日夜、中野ゼロの学習室で進藤兵(ひょう)さん(東京自治問題研究所、都留文科大学教授)の「小池都政と都民ファーストの動向をどう見るか」という講演が行われた(主催 市民と野党をつなぐ会@東京)。

都民ファーストは小池都知事の与党であり、築地・豊洲問題の公約で「知事の立場を尊重します」としているように小池都知事の政策に合わせる傾向がみられるので、まず小池都政の10か月を振り返る。

1 小池都政をどうみるか
この10か月を7つに細かく区分して評価する。
1)2016年7月末 都知事選挙で小池、当選
選挙は自民中央(都連主流派)と都連反主流派の保守分裂選挙だった。
保守分裂はアメリカ、フランス、ドイツでも起こっている。日本でも大阪で保守主流派と極右の大阪維新の分裂、沖縄では保守と革新の共闘、東北でも農協など穏健保守が野党と結びつくというかたちで保守分裂がみられた。
分裂してよかったのは、都政の支配構造があらわになったことだ。たとえば築地・豊洲問題や、東京駅から品川駅にかけての都市再開発の政財官トライアングルの構造が明確になった。また都民の、福祉より道路という都政に対する変革の願いが、独特のかたちで小池当選をもたらしたことだ。
2)9月28日の所信表明演説 
築地・豊洲問題は「立ち止まって考える」ということで移転は延期になった。その他オリンピックの経費見直し、知事報酬の半減条例は評価できるが、まちづくりや経済政策は舛添都政の継承に終わっている。貧困をなくすという視点はない。また個人として核兵器や国防軍推進なので、九条擁護発言はまったくみられない
3)11月末の「2020年実行プラン」骨子発表 
予算編成を公開し、政党復活予算を廃止したことは評価できる。しかし小池都政はやがて本来の権威主義と新自由主義の都政に変っていくとこの時期に考えた。このころ「小池与党」づくりが始まった。
4)年末の「2020年実行プラン」策定と17年1月28日の所信表明 
新年度予算案(初の小池都政予算)を提案したが、豊洲移転を前提にしなかったこと、百条委員会を設置し石原・浜渦の責任追及を支持したこと、保育予算を増額したことは評価できる。しかし都議選後に10年ぶりの行政改革が発表される。キーマンは上山信一だが、都・外郭団体・民間がやる仕事をはっきり分け、水道、港湾の管理運営、都営交通を民営化する可能性がある。新自由主義的な路線だ。また実行プランはアベノミクスと二人三脚のもので、経済成長に重点を置く開発型の色彩が強い。
5)3月末、全会派一致で予算成立 
3月に公明、連合東京、生活者ネットと政策協定を結んでいたことがあとで公表された。小池都政には、都議選までの顔と都議選後の顔のふたつの顔がある。「真の小池都政」は都議選後に展開されるが、それは石原都政や舛添都政とほぼ同じだろう。
6)6月1日「都民ファーストの会」代表に就任 
自民党を離党し、決起大会は事実上の党大会であった。綱領は4月に発表していたが、選挙公約を発表した。自民党と都民ファースト、小池の関係が離れ始めた。

2 小池都政はどこへ向かうか――「小池実行プラン」を中心として
小池知事は「3つのシティ」として、防災や治安の「セーフ シティ」、保育や教育の「ダイバー シティ」、国際金融・経済都市や交通・物流ネットワークの「スマート シティ」を提唱している。2017-21年度の4年の「事業費一覧」実行プランの14pを参照)でみると、1位は「地震に強いまちづくり」、2位は「交通・物流ネットワークの形成」、3位は首都高補修など「都市インフラの長寿命化・更新」で保育・医療はそれほど多くない
重要なのは4年後の成長戦略実行プランの332―342pを参照)だ。都内GDPを94.9兆から120兆へ、世界の都市ランキング3位から1位へ、などの数値目標と5つの戦略が並ぶ。国際金融都市・東京を実現するため、海外金融系企業を誘致し外国人を暮らしやすくするため、虎ノ門に住宅をつくり、特区を利用し外国医師の診察サービスを充実する。新技術と発想で革新を生み出すため、IoT分野等の外国企業の誘致、東京駅周辺の大規模再開発、東京の強みを伸ばすため観光を有力産業にし、外国人旅行者の受入れ環境をよくする。そして道路、鉄道、東京港、羽田空港の整備充実、アベノミクスと同じ方向だ。
都市づくりのグランドデザイン」の素案が5月に発表された。政策を地図に落とし込み、地域づくりをデザインしたものだ。注目すべきは「広域的なレベルの都市構造」という都市像だ。従来は都心・副都心に高層ビルを集中させて、それ以外は庶民の住宅だった。もうそれはやめて、おおむね環七の内側は、すべて再開発して高層オフィス・高層マンションにしすべて都心化するというものだ。いま十条がねらい打ちされている。今後、猛烈な勢いで再開発が進むが、これを推進しているのが小池都政だ。

3 都議選の争点は何か
選挙公約を見ると、自民党は、豊洲移転促進、個人都民税10%事業所税50%減税、就学前教育の無償化など、「ばらまき」を提案する公約にした。民進党は保育士の給与引上げ、高齢者への家賃補助などを挙げる。都民ファーストは、都議会改革、待機児童対策、教育の機会など321の政策を上げる。しかし築地問題での公約で都民の食の安全安心を掲げるが最終的には「知事の立場を尊重します(基本政策13)としかいわず、貧困への言及はない。その他、公明、共産、生活者ネットほかも公約を発表している。
都市政策をめぐる争点として大きなものが3つある。まず都市再開発の是非を問うことだ。築地でいえば環状2号線の開通と市場跡地の再開発、豊洲は「せり」をやめ大手スーパー中心の流通システムに変更することへの是非がある。次に都民の生活保障、とりわけ子ども、若者、女性、障がい者などに対する脱貧困をどうするか、3番目に都議会の民主化・透明化・公開化がある。わたしは「地方議会を住民参加のセンターに」を論点にすべきだと考える。

4 都議選から衆院選へ――市民の連合と野党の共闘の課題
都議選を使って野党の共通政策をもっと豊かにできるとよい。とりわけ子ども、若者、女性、障がい者などこれまで政治に参加しにくかった人びとの日々の生活から政策を豊かにふくらませることができないか。
東京に則していえば、今年2月に首都大学東京が「子供の生活実態調査」結果を発表したが、これは事実上子どもの貧困の調査になっている。東京には20%を超える子どもの貧困が存在する。また若者(18-25歳)の貧困は先進国1位となっている(2012年調査)。東京の産業構造の変化で、製造業は激しく落込み、医療・福祉系でのみ増加している。
国政選挙で勝つには、1 外交・安全保障政策と2 経済政策の提示が必要だ。その際東京固有の子どもの貧困のような地域課題を深く考え、東京から経済政策を発信することが肝要だ。さらにいえば、23区の町工場、多摩の製造業、社会的サービス産業など、グローバル経済に翻弄されない東京ローカルの「地域経済」を再生させ、賃上げや最賃の引上げ、家賃補助を行い内需拡大の好循環を図ることだ。

環七の内側の風景がすべてこういうふうに変るのだろうか? 変えてよいのだろうか?
小池都政は、スタートしてまだ10か月ではあるが、進藤さんの講演でアベノミクスと二人三脚、石原や舛添都政との違いがないことはよくわかった。
石原都知事が交替すれば、都教育委員会は元のように戻るかと期待したが、知事が3人変わってもいまのところ変化はない。籾井NHK会長が交代してもやはりNHKのアベチャンネルの姿勢が変わらないのと同じようなものなのか。
政党としての都民ファーストはどうなのか。自民党と都民ファーストの会の違い、第二自民党なのか別の保守新党なのかという質問に対して、進藤さんは「事態は流動的である。細川の日本新党のような都市型でモダンな保守新党になる可能性もあるし、野田数の力が強くなり大阪維新のような極右になるかもしれない。また横浜の林文子市長のプロセスのように第二自民党に墜落していくかもしれないし、みんなの党のように分裂し消滅するかもしれない。いろんな可能性があり、今後の政治的力関係で決まっていく」と答えた。
都議選後、小池が「本来の権威主義と新自由主義の都政」の方向に向かわないことを願いたいものだ。
ネット中継で、6月1日の都民ファースト決起集会をみた。「東京大改革」をキャッチフレーズとし、イメージ選挙では強そうだった。待機児童対策や「教育の機会を増やす」「健康・長寿」も基本政策に入れているし、特に女性票を集めそうだ。公認予定候補48人中女性は17人35%、司会も龍円愛梨(渋谷 元テレ朝)で、選挙の点ではポピュリスト政党であり、台風の目であることは間違いない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 検定「道徳」教科書はどんな... | トップ | 共謀罪法反対は終わらない »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

集会報告」カテゴリの最新記事