新年には、朝風呂をする銭湯がある。大手町の稲荷湯もそのひとつで、2日の午前だけ営業する。皇居1周ジョギングを兼ねて朝早く出かけた。新年皇居ジョギングをするようになったのはコロナ以降なので、3度目だ。
ところが今年はひとつ違うことが起こった。桜田門から気象庁前あたりの内堀通りを警官が封鎖していたのだ。理由は3年ぶりの皇居一般参賀の復活、天皇一家がパンダ家族のように1日6回ベランダに立つあのイベントだ。ジョギング者にとってはいい迷惑だ。
スタートとゴールの気象庁前
そこで気象庁前からスタートした。若い人も高齢組も、海外からの人も含め、そこそこ走っている人がいた。天気はよく、中間点あたりの三宅坂からのながめもよかった。
桜田門あたりからスピーカーで「いま、11時と11時50分の回の方の受付をしています。当選券を持っている人しか入れません」とアナウンスしている声が聞こえた。いつもの皇居見学の人ほどの人流はみられない。報道によれば、10万2370人の応募で当選9600人、実際に訪れたのは7300人とある。10倍以上の倍率なので、かなりの人気イベントだ。
皇居周辺のあちこちでチラシを配布しているグループがいた。神霊教という宗教の信者で「国家の安泰のために憲法を改正し、世界に貢献できる国家を目指そう」がキャッチフレーズらしい。昨年話題になった世界平和統一家庭連合(旧・世界基督教統一神霊協会(=勝共連合))と関係ある団体なのかどうかは不明だ。
中間点あたりの三宅坂から桜田門を見下ろす
桜田門から晴海通り外側に渡らされ、日比谷公園に沿って日比谷交差点まで行って左折、外堀通りもやはり内側には入れてもらえず消防庁のあたりで内堀通りに戻り、スタート地点に戻った。距離としては400mほど延びただけだが、何回も警官に内側に入れるか尋ねたので疲れ、後半は歩いたり走ったりの繰り返しになった。
さて今日の目的の稲荷湯だ。受付で年賀のタオルをいただいた。ウサみみを付けたゆっポくんが跳ねているイラスト付きだった。
銭湯は空いていて、男風呂の客は10人程度だった。いかにも近所のお年寄り風の人も、大きな荷物をもつおそらく遠方からジョギング目的で来た人もいた。もっとも、この銭湯は意外に小さくカランの数が17しかなかった。
湯煙で曇っているが、富士の銭湯絵もみえた。しかし何か違う。浴槽の壁にあった目薬、パン屋、居酒屋、便利屋など近所の店名広告がないことに気づいた。いまどきの銭湯では珍しい広告がこの店では掲示されていたはずだ。コロナなどの不況のせいで、とうとうこの店でも店内広告がなくなったのか、まあ時代のせいで仕方ないと思った。
しかし上がってから受付の女性に聞くと「絵を描き換えたのでペンキが落ち着くまで一時的に外している」とのことだった。そういえば、絵も伝統的な富士はたしかに真ん中にあったが、「ピンク、黄、黄緑、青緑などちょっとパステルカラー調の色が使われていて、珍しいと思いました」というと「描き換えにあたり、子どもたちの銭湯壁画デザインコンテストを行い、入選作をモチーフにして田中みずきさんが絵を描いた」そうだ。たしかに受付前の壁に作品募集のポスターが貼ってあった。店もいろんな努力をしていることを知った。
店を出て振り返ると、角地の銭湯で玄関が出っ張っており、ポスターを貼るスペースが広く、区議予定候補のポスターが12枚も貼ってあった。もちろん自民が一番多く4枚あったが、公明、立民、共産、れいわも各2枚貼られていた。今年の4月23日が4年に一度の区議選だからだ。
銭湯の向かいが内神田尾嶋公園ということはかつて書いたが、左折してしばらくいくと御宿稲荷神社というとても小さくかわいい神社があった。家康が関東に封移された時に宿をとった郷士の邸の庭に祀られていた宇迦御魂の神祠を、家康足留めの記念として「御宿稲荷神社」と称して社地を与えたのが始まりだそうだ。今年から大河ドラマ「どうする家康」が始まるのでたまたま新年に遭遇したのは何か運がよいのかもしれない。
また、帰りに銀座を通りかかるとかなりの人出だった。大きなスーツケースを転がす家族連れ外国人観光客も多い。コロナの昨年や一昨年には考えられなかったことだ。
これでは、当分新規感染者数も1万人以上の高止まりが続きそうだ。
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