国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

エマニュエル・トッドの自由貿易批判:保護貿易は経済危機を救うか?

2011年01月06日 | 欧州
何故エマニュエル・トッドは保護主義を主張しているのだろうか?これはフランスの特殊事情だと思われる。2010年11月11日の記事「英仏両国の衰退」でも書いたが、ユーロ安で大幅な貿易黒字のドイツと貿易赤字のフランスの間で経済力の格差が大きくなっている。ドイツ・オーストリア・オランダ・スイス・ベルギー北部などのゲルマン圏が経済的強者であり、ラテン・スラブ圏とイギリスが経済的弱者である。ゲルマン圏以外の地域は経済力低下に見合った国民の生活水準低下が必要なのだが、フランスでは革命のお国柄のためかデモ・ストライキが相次ぎ、国民に生活水準低下を納得させることが困難なのである。従って、保護貿易という形態で途上国との競争に勝てない弱体な産業を国内に増やしていって国民の失業を減らしていこうというのがトッドの主張だと思われる。一言で言えば、フランスは既に先進国から脱落したのだ。 ただ、ユーロ圏は域内での自由貿易を貫いており、フランス一国の事情で保護貿易を導入することは出来ない。結局は、ゲルマン圏とラテン圏の二つにEUが分裂し、二つの共通通貨が並立する状態になると思われる(スラブ圏や北欧諸国は各国の事情に合わせていずれかの共通通貨を選ぶと思われる。イギリスはもし共通通貨に加盟するならラテン圏通貨になると予想する。)。そして、ゲルマン圏連合は自由貿易を維持して先進国の地位を維持し、ラテン圏は保護貿易に向かい先進国から脱落していくことになるだろう。日本としては、途上国に勝てない産業は贅肉として削り落とし、途上国に勝てる産業だけからなる筋肉質の国家を維持していくことが先進国の地位の継続に繋がると思われる。 私がこのブログで繰り返し述べていることだが、今回の世界大不況の解決には二つの必要条件がある。一つ目は、東アジアに集積した過剰な工場設備が破壊されてデフレが終わることであり、その観点で見て日本に最も望ましいのは韓国の滅亡と北朝鮮による半島統一+中国内陸部の内乱化である。日中戦争で日本が滅亡するという悪夢だけは回避せねばならない。二つ目は、ニューヨークとロンドンの国際金融資本から、米国西海岸と日本とドイツの三大先進国・地域への世界覇権移動である。第二次世界大戦の例から考えて、この二つの条件なしには世界不況は終わらないだろう。 . . . 本文を読む
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