国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

TPP参加と日本の農政について

2011年01月12日 | 日本国内
日本の農政は、稲作農家だけは高い米価で保護し続けてきた。多くの兼業農家にとって、主たる収入源は会社勤めであり、農業はもはや自家消費用の米を供給する程度の役割しか持っていない。そもそも、農業は長時間労働の割に収入が少なく、超大規模化しない限りは儲からない産業である。兼業農家が米作を続けているのは、先祖から引き継いだ農地を守るという意志、あるいは税金対策が主であると思われる。しかし、日本に食糧危機が訪れる危険性は年々高まっている。第二次大戦直後の食糧危機は戦争による食料生産の低下と輸入の停止によるものであった。現在の農産物価格の国際的上昇は投機・ドル安の影響が大きい。しかし、地球人口は増加し続けており、中国等の新興国では経済発展に伴って畜産用の穀物の需要が激増していくと思われる。更に、急激な気候変動で世界的な大凶作になった場合、アメリカ等の農業大国が自国民を優先するために農産物の輸出を停止する危険性は否定できない。その時に機敏に対応して国内で可能な限りの食物を生産するには、営農意欲を持った兼業農家を維持していくことは十分有益であると考えられる。私は、このような考えに基づいて日本の支配階層は米作を保護し続けてきたのであり、今後もそれを継続すべきだと考えている。TPPで工業生産物の輸出は多少増えるかもしれないが、それは経済的利益に過ぎない。TPPで日本の農業が衰退した時に世界的食糧危機が訪れるならば国民の多くが餓死することは目に見えている。それだけは絶対に回避せねばならないのであり、農水省もそれを念頭に置いて行動しているのだと思われる。日本には、山間部の耕作放棄地、ゴルフ場、スキー場、北海道の根釧原野の大牧場など、耕作に転用可能な土地が沢山ある。ゴルフ・スキーは一時のブームが廃れて閑古鳥が鳴いているが、私はこのブームは食糧危機到来時に備えた潜在的農地の開発が目的だったのではないかと考えている。 . . . 本文を読む
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