治安判事は椅子の上で身体を立て直し、マルグリット嬢の目を探るように見た。二人の目が合ったとき、彼は言った。
「それでは、書き物机の中で我々が見つけた手紙というのは、貴女のお母上からのものなのですね……」
マルグリット嬢は顔を赤らめた。その手紙に関しては既に尋ねられていたが、彼女は答えないでいたのだった。彼女はしばし考えている様子だったが、やがて次のように答えた。
「判事様のお考えになっていることは私と同じでございます」
そしてすぐに、新たな質問を避けるように、彼女は一種の能弁さで先を続けた。
「更に、新たな差し迫った問題が持ち上がり、私は自分の出生についてあれこれ悩んでいる余裕もなくなったのです。それから一カ月後、ある朝朝食を取っているとき、伯爵がその日の晩餐に客を二人呼んであると私に告げたのです。それは今までの習慣を大きく打ち破ることだったので、私はびっくりして口もきけませんでした。
『確かに、こんなことは滅多にないことだ』と伯爵は陽気に言いました。『が、そういうことだ……ときには人づきあいもせんとな……今夜お迎えするのはド・フォンデージ氏とド・ヴァロルセイ侯爵だ。だからマルグリット、今夜はわしのためにおめかしをしてくれんか』
六時に、これら二人の紳士が揃って到着しました。私はド・フォンデージ様は知っていました。『将軍』と呼ばれている方でド・シャルース伯爵の唯一のお友達です。それまでに何度もいらしていました。でもド・ヴァロルセイ侯爵という方にはお会いしたことがなく、その朝初めて名前を聞いたのです。その方のことをとやかく言うのは控えますが……一目見たときから、感じが良いとはとても言えず、虫唾が走るほどでした。最初私をあまりにじろじろ見るので、上辺だけでも愛想の良い態度を取ることが苦痛になったほどです。その後は自分が気の利く人間であることを誇示しすぎで、晩餐のときは殆ど私だけを相手に喋っていました。特によく覚えているのは、彼が良き家庭と呼ぶものを描いて見せたことです。それを聞いて私は気分が悪くなりました。彼によると、夫というものは家庭における筆頭大臣に甘んじるべきで、妻の気まぐれの忠実な僕でなければならない、それが彼のやり方だと言うのです。それから、自分が結婚した暁にはヴァロルセイ侯爵夫人が望むすべての自由を与える、両手にあまるほどのお金、最も豪華な衣装、パリで一番のダイヤモンド、煌びやかな装身具、その他贅沢の極み、つまり夢物語のような、目も眩むがごとき生活を……。
『こういう考えを持つ夫に満足しない侯爵夫人がいるとすれば』と彼は私を横目で見ながら付け加えました。『その方はよほど気難しい方でしょうな』
私は腹が立って我慢できませんでした。
『そのような考えを持つ夫がいると思うだけで』と私はにべもないない口調で答えました。『私なら一番厳格な修道院の奥まで逃げ込みたくなってしまいます』
彼は面目を潰されたという顔をしていましたが、『将軍』は、ド・フォンテージ様のことですが、侯爵に嘲るような視線を送ると、別の話題を口になさいました。