伯爵はなぜか以前より開けっぴろげになり、出来る限り現金を集めようと専心しているのを私に隠しませんでした。それから実業家の方々が頻繁に来られるのを目にしました。彼らが帰った後、伯爵は私に紙幣の束や証券類を見せ、こう言ったものです。
『可愛いマルグリットや、私がお前の将来のことを考えているのがよく分かるだろう』と。
伯爵が亡くなられた今、このことだけは言えます。伯爵の人生の最後の数か月間、絶えず彼の頭にあったものはこのことでした。私を引き取ってから二週間も経たない頃、伯爵は私を養子とし、私を唯一の遺産相続人に指定する旨の遺言書を作成しました。しかしこの遺言書は破棄されました。私に十分な保証を与えるものではない、と仰って。そしてその後十通以上も作っては破り捨てるということが繰り返されました。というのも、伯爵はいつも遺言書の条項をどうするか、最終的にどのようなものにするかについて気に病んでおられました。まるで不意打ちの死の予感でもあったかのように。それにもう一つ付け加えて申し上げますと、伯爵は私に財産のすべてを残すことよりも、誰かに相続させないようにすることの方に心を砕いているように見えました。彼の書いた最後の遺言書を一緒に燃やしながら、彼は私にこう言いました。
『この証書は無意味だ。異議を申し立てられ、おそらく取り消されることだろう。私にはもっと良い考えがある。すべて上手く収める方策がある』と。
私は反対しようとしました。自分がなんらかの復讐あるいは不正行為の道具に使われているようで、もし相続人が存在するなら、その人たちの権利を剥奪することに手を貸すことになると考えて憤りを感じたからです。
『わしのやることに口出しするな』と伯爵は容赦ない口調で言いました。『わしの財産を狙っている奴らに一杯喰わしてやるのだ。良い気味だ!そうとも!やつらはわしの所有地を喉から手の出るほど欲しがっている。よし、遺してやろうじゃないか。奴らが手にすることになったとしても、それはぎりぎりの価値まで抵当が掛けられた土地だ』5.21