エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

1-XIII-7

2021-08-12 12:46:51 | 地獄の生活

「ということでしたら大丈夫ですよ。売って、その代金を安全な場所に保管することです」

良心の咎めるルプラントル氏は耳を掻いた。

「あの、お言葉ですが」と彼は言った。「私もその方法は考えました。ですが、そのやり方は、その……不正直と言うか、酷く危ないやり方のように思えるのですが……。私の資産が減少しているのをどうやって説明したらいいのですか?私の債権者たちは私の敵なのです。なにか怪しげな素振りを嗅ぎつけたら詐欺破産として私を告発するでしょう。そうしたら私は刑務所に放り込まれ、そして、そして……」

フォルチュナ氏は肩をすくめた。

「私が方策を提案するときは」彼はきびきびと先を続けた。「危険なしにそれを遂行する方法も併せて提示します。よくお聞きください。仮に、あなたが現在ではすっかり値打ちが下落した株を高価な価格で買ったことがあるとしましょう。あなたはその株をあなたの資産として記載することはできないでしょうか? そして安全な場所に移しておいた金額を書いておくのです。あなたの債権者たちはその株の現在の価格ではなく、以前の額を鵜呑みにするしかありません」

「なるほど! ですが残念なことに、私はそのような株を持ってはいません。ですから……」

「今買うのですよ!」

石炭卸商のルプラントル氏は目を丸くした。

「え、あの、すいません、よく分からないのですが……」

彼は実際のところ全く理解できなかったのだが、フォルチュナ氏は具体例を用いて理屈を説明していった。彼は大きな鉄製の金庫を開き、何年か前に国中に出回っていた株券の大きな束を、目をぱちくりさせている依頼人に見せた。これらの株は大勢の無知な人間や貪欲な愚か者たちの夢を打ち砕いたものであった。ティフィタ鉱山、ロベール操舵装置、大陸輸送、ベルシャム炭鉱、グリーンランド漁場、相互割引銀行等々の株券、社債などである。それぞれ一時的に脚光を浴び、証券取引所で五百フランあるいは千フランで取引されたこともあるが、現在では紙の値打ちしかない……。

「よろしいですか」とフォルチュナ氏が言い始めた。「仮にあなたが引き出し一杯にこれらの証券をお持ちであるとしましょう……」8.12

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