エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

1-XIII-10

2021-08-20 11:10:08 | 地獄の生活

「昨日訪問した債務者数は?」とフォルチュナ氏が尋ねた。

「二百三十七人です」

「で、受け取り額は?」

「八十九フランで」

イジドール・フォルチュナ氏の顔に満足を表す皺が寄った。

「悪くないな」彼は言った。「なかなか良いじゃないか」

そして仕切り棚の中から分厚い目録を取り、それを開きながら言った。

「ちょっと待った!記録しておこう」

すぐに奇妙な作業が始まった。フォルチュナ氏が名前を一つ一つ読み上げると、会計係が帳簿の余白に書き込んである数字を答えていった。

「〇〇氏、××氏……」と名前を挙げられる度に、会計係は次のように続けた。「…は二フラン、…は転居しました、…は留守、…は二十スー、…は支払い拒否……」

フォルチュナ氏はどのようにしてかくも多くの債務者を見つけることができたのか? そしてこのような少額の勘定に甘んじているのは何故なのか? ……答えは簡単だ。偽りの収支決算で帳尻を合わせる仕事の他に、フォルチュナ氏は破産後の清算に入っている事例にも目を光らせていた。その際全く無価値になったとみなされる大量の債券証書を競売でただ同然で買い込む。そして他の者なら一スーも手にすることのないやり方で、彼は儲けるのである。手荒な真似などはしない。それどころか、彼のやり方は辛抱強さ、物腰の柔らかさ、礼儀正しさに特徴づけられる。そして疲れを知らぬ、決して諦めぬ粘り強さによって目的を遂げる。ある債務者が彼にこれこれの支払いをするべしと決定すれば、そこでおしまいとなる筈であるが、彼はその債務者を放ってはおかない。二日に一度は部下に会いに行かせ、後をつけさせ、付きまとい、うるさがらせる。部下たちに彼を包囲させ、家に帰るときも、仕事に行くときも、カフェに行くときでも常にどこでも、絶えず付きまとう。但し、常に最高に洗練された礼儀を忘れない……。このようにすれば、いかに払い渋る相手でも、どんなに金詰りの相手でも最終的には降参する。彼らは怒りに駆られ、このようにしつこく付け回すのをやめさせるために、なんとか金を工面するのである。フォルチュナ氏は五十サンチームからでも受け取るため、彼らは支払う。

ヴィクトール・シュパン以外にも五人の部下がおり、彼らは日中債務者を訪問する。彼らは毎朝巡回表を配られ、夕方には会計係に報告する。そして会計係はその日の総括を主人に伝える。このちょっとした仕事が相続人探しと破産処理以外の収入源となる。フォルチュナ氏の持つ複数の職業の中で、これが三番目であり最後のものである……。8.20

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