しかし相手は最後まで言わせなかった。
「ああ分かりました!」とルプラントル氏は叫んだ。「分かりましたとも。私は在庫を売り払い、安心してその金を自分の懐に入れられるというわけですね。私の財産状況を示す何万フラン分かの株券がそこにあるわけですから……」
彼は喜びに有頂天になった。
「貰います」と彼は注文した。「十二万フラン相当の株券を。それと、何種類かの株を取り混ぜてくださいよ。債権者たちに多種類の株券を見せてやりたいので」
フォルチュナ氏は鹿爪らしくまるで紙幣ででもあるように株券を数え、選り分け始めた。その間にルプラントル氏は財布を取りだした。
「おいくらになりますか?」と彼は尋ねた。
「三千フランです」
相手は飛び上がった。
「三千フランですって!」彼はオウム返しに言った。「御冗談でしょう! これらは十二万フランという額面のただの紙屑で、一ルイの値打ちもないじゃないですか」
「私なら百スーの値打ちもない、と言いますね」とフォルチュナ氏は冷たい口調で返した。「確かに言えることは、債権者に弁済するためにこれらを必要としているのは私ではないということです。ところが、貴方は違う。これらの紙屑があれば貴方は少なくとも十万フランを浮かせることが出来る。私が頂くのは三パーセント、大した数字ではありません。そういうことです。私は誰にも強制はいたしません……」
それから至極意味ありげな口調で彼は付け加えた。
「これらの株券は探せばもっと安く手に入れられるところもあるでしょう。が、ご注意なさった方がよろしいです。他を当たったりしていると、債権者に怪しまれてしまいますよ」
「この悪党、俺を密告するつもりだな」とルプラントル氏は思った。してやられた、と気づいた彼はため息を吐いて言った。
「それじゃ三千フランで手を打ちましょう。でも、お願いしますよ。もうちょっと色をつけて貰えませんか? 二万フランほどおまけに付けて貰うのはどうでしょう」8.15