ルプラントル氏は、こうなったらもう仕方がないと観念した男の引き攣った笑いを浮かべ、それでも何らかの厚意を要求しようとした。が、フォルチュナ氏は占い師のような厳粛さを崩さなかった。彼が三千フランと引き換えに渡したのは、厳密に先ほど彼の言った額の株券であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。更に重々しい声でこう付け加えさえした。
「ちゃんと十二万フランあるかどうか、お確かめください」
相手は数えもせず、紙屑の株券をポケットにねじ込んだ。が、立ち去る前に今月末彼の債権者たちに貸借対照表を提示する肝心なときには力添えをしてくれるという約束をフォルチュナ氏に取り付けた。債権者たちに「この人は随分と不運に見舞われた人だ」と思って貰わねばならないからだ。
この手のちょっとした仕事はフォルチュナ氏のお手の物だった。相続人不明の遺産を相続しうる人間を探すという仕事以外では、彼はもっぱら厄介な決済問題に従事し、特に破産処理に関しては彼の右に出る者はいなかった。今ルプラントル氏に示したような巧妙な策により、彼は大儲けをしたのである。現在ではよく知られているこのやり口は、元はと言えば彼が発案者のようなものであった。彼のやり方のえげつない点は、彼の忠告に従う者は、彼がふんだんに持っている無価値な有価証券を、逆らえば密告されるという条件のもと彼の言い値で買わなければならないということである。これはまさに、無料で診療を行う慈善的な医者のやり口と同じだ。彼らは病人に自分の治療法以外は禁じ、それを相場の二倍の報酬で与えるのである。どんな発明の特許でもこの種の発見ほど独占的な搾取を保証するものはない。破産が殆ど日常的な経済戦略となり果てた今の時代、フォルチュナ氏の真似をする者はおそらく後を絶たないであろう……。それでもやはり彼は、危険を回避しつつ破産宣告をする巧みな方法を堂々と伝授する悪賢い人間の一人であった。
次にやってきた依頼人は、単に地主との間に持ち上がった問題を相談に来ただけだったので、フォルチュナ氏はさっさと片付け、その後執務室のドアを半分開けると大声で呼んだ。
「会計係!」
それに応えて、ヴィクトール・シュパンを思わせるようなみすぼらし身なりの三十五歳の男がすぐにやって来た。片手をカバンの中に、もう一方の手に帳簿を携えている。8.18