あのパスカル・フェライユール、極悪非道な悪党たちの被害者となった彼を救い出すために大きな働きをすることが出来れば、自分がかつて犯した犯罪の償いにある程度までなるのではなかろうか! それにしても、この状況は彼の理解力を越えるものであった。どのようにしてああいう悪党がパリという大都会に忽然と姿を現し、いくら自ら幅を利かせるような行動を取ったにせよ、彼が何者なのか、どこから来たのか誰も知らないままに人々に受け入れられるようになったとは? ド・コラルト子爵のようなならず者がパスカル・フェライユールの名誉を傷つけるようなことが、そもそも出来たのは何故なのか?
全く、なんということか!正直に生きている人間の名誉などというものは、どこかの陰謀家に目障りな奴と思われた途端、木っ端みじんにされてしまうというわけか!してみれば人生とはかくも出来の悪いゲームであり、勇気と信義と実直の一生よりもたった五分の下劣な茶番をより重しと判断する歪んだ秤なのか……!このような実例から浮かび上がる世相とは次のようなものだ。大半の善良な人々は悪人を前にしたとき毅然とした態度を取るのでなく、円滑な人間関係を保つためという口実のもと、あらゆる譲歩に身を任せるが、それは危険を伴う怠惰と同義なのだ……。
このような思いに耽っていたシュパンだったが、自分が持参している返信の封を開けて中を見てみたいという気持ちには全くならなかった。マダム・ポールの幼い息子からもっと正確な情報を引き出すことを自らに禁じたのと同じ感情が彼の中に渦巻いていた……。自分の洞察力だけを頼って真実に到達すること!彼の若いプライドを刺激したのはまさにこの一点であった。結局のところ、正当な弁護のための行為ということで正当化され許されることは可能かもしれないが、それでもやはり遺憾であり危険な行為に頼る必要などあるだろうか? この手紙の封印を破ることがどうしても必要か? マダム・ポールとあのムションとかいう諺の好きな忠告者の間で交わされた言葉で、彼が今携えているのは最後通牒であることは疑問の余地のないほど確かなことではないか? このド・コラルト子爵宛ての手紙には、指定された猶予期間の後に彼にとって致命的な汚名となる罰を受けてもらうことになると記されてあるのではないか?
この点においてシュパンは確固たる自信を持っていたので、彼の思いは既にパスカルとマルグリット嬢に及び、彼らのためにこのことをどう利用すればいいか、一生懸命考え始めていた。見棄てられた妻であるフラヴィの嫉妬心とトリゴー男爵夫人の傷ついた自尊心を対決させること、ド・コラルトの不名誉な過去を曝し、彼をやっつけること、それらは事の性質上当然の成り行きとシュパンには思われた。しかし、どのような策を用いて世間をアッと驚かせ顰蹙を買うような、また同時にパスカルの輝かしい名誉回復に繋がるような結末に持って行くか、これは劇作家の頭を悩ませるような難問であった。作品の主題は決まっているが、それをあれやこれや頭の中でいじくり回して可能な筋書きをひねり出そうとする劇作家のように、シュパンも頭を絞っていた。1.9
全く、なんということか!正直に生きている人間の名誉などというものは、どこかの陰謀家に目障りな奴と思われた途端、木っ端みじんにされてしまうというわけか!してみれば人生とはかくも出来の悪いゲームであり、勇気と信義と実直の一生よりもたった五分の下劣な茶番をより重しと判断する歪んだ秤なのか……!このような実例から浮かび上がる世相とは次のようなものだ。大半の善良な人々は悪人を前にしたとき毅然とした態度を取るのでなく、円滑な人間関係を保つためという口実のもと、あらゆる譲歩に身を任せるが、それは危険を伴う怠惰と同義なのだ……。
このような思いに耽っていたシュパンだったが、自分が持参している返信の封を開けて中を見てみたいという気持ちには全くならなかった。マダム・ポールの幼い息子からもっと正確な情報を引き出すことを自らに禁じたのと同じ感情が彼の中に渦巻いていた……。自分の洞察力だけを頼って真実に到達すること!彼の若いプライドを刺激したのはまさにこの一点であった。結局のところ、正当な弁護のための行為ということで正当化され許されることは可能かもしれないが、それでもやはり遺憾であり危険な行為に頼る必要などあるだろうか? この手紙の封印を破ることがどうしても必要か? マダム・ポールとあのムションとかいう諺の好きな忠告者の間で交わされた言葉で、彼が今携えているのは最後通牒であることは疑問の余地のないほど確かなことではないか? このド・コラルト子爵宛ての手紙には、指定された猶予期間の後に彼にとって致命的な汚名となる罰を受けてもらうことになると記されてあるのではないか?
この点においてシュパンは確固たる自信を持っていたので、彼の思いは既にパスカルとマルグリット嬢に及び、彼らのためにこのことをどう利用すればいいか、一生懸命考え始めていた。見棄てられた妻であるフラヴィの嫉妬心とトリゴー男爵夫人の傷ついた自尊心を対決させること、ド・コラルトの不名誉な過去を曝し、彼をやっつけること、それらは事の性質上当然の成り行きとシュパンには思われた。しかし、どのような策を用いて世間をアッと驚かせ顰蹙を買うような、また同時にパスカルの輝かしい名誉回復に繋がるような結末に持って行くか、これは劇作家の頭を悩ませるような難問であった。作品の主題は決まっているが、それをあれやこれや頭の中でいじくり回して可能な筋書きをひねり出そうとする劇作家のように、シュパンも頭を絞っていた。1.9
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