「お前に知られなければ、私はこんな地獄の底からでもお前の母親でいられたのに。そしてお前をそっと眺めていられたのに……。お前に恥ずかしい思いをさせず、お前を軽蔑することもなく、お前を助けることもできたのに……。私のことを知られた今となっては、もうお前にしてやれることは何もない……何も! 私はお前を援助するよりも貧窮で死なせる方を選ぶわ。お前が死ぬのを見る方がまし。お前が私の汚れた金で穢されるのを見るよりは……」
「しかし……」
「何を言うの! 私が今まで渡してきたあの金をまだ平気で受け取れると言うの? そもそも私がそれを続ける気になるなんてことがあるとでも?」
毒蛇がウィルキー氏の前で鎌首をもたげたとしても、これほど素早く彼が飛び退くことはなかったであろう。
「そんなことは絶対ありません!」と彼は叫んだ。「ああ、断じてそんなことはありませんよ! 僕を一体どんな人間だと思っているんです?」
彼が感じた嫌悪感は心底からのものだった。彼はそれを奇妙な形で表現したのだが、見るからに本心からであることが見て取れた。それを見たマダム・ダルジュレの心が希望に揺れた。
「私の言葉が過ぎたんだわ」と彼女は思った。「可哀想なウィルキー! 悪い考えに唆されてつい惑わされてしまったのね。根は悪い子じゃないのよ……」
しかし口に出してはこう言った。
「それでは、これから新しい人生が始まるのだということがよく分かったようね。これからどうするつもり? 何をしてどのように生きていくつもりなの? 衣食住を賄わなくてはならないのよ。お金が掛かるわ。そのお金はどこから手に入れるの? 働く、という言葉を聞くことさえ我慢できないお前が。ああ、パターソンさん、あなたの言うことを聞いていたら! あの人は私みたいに盲目じゃなかった。口を酸っぱくして私に言っていたものよ。金をふんだんに与えすぎることは、お前の人生を台無しにすることだ、お前の未来を奪うことだって。分かっているの? この二年間でお前が浪費した額は五万フラン以上よ。一体何に使ったの? 金持ちの息子を気取っても、お前にはそんな家族はいない。今の不安定な状態はいつ壊れるかもしれないのに……。法律学校には少なくとも十回ぐらいは行ったの? ……行ってないのね。でも競馬場には姿を見せている。劇場の初日にも、評判のレストランにも、つまりお金のかかるところや遊びの場所にはいたる所に顔を出している。で、どんな人たちと付き合っているの? 仕事もせずぶらぶら暮らしている薄情で頭の空っぽな者たち、詐欺師、詐欺に騙されるカモたち、博労、賭博場の使用人、堕落した女たち……」3.2
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