ウィルキー氏の口から洩れたぎすぎすした冷笑が彼女の言葉を遮った。
自分の友人たち、自分の楽しみ、自分の好み、そういったものを攻撃されては黙っていられない。我慢などできるか……。
「上等じゃないか!」彼は言った。「言ってくれるね! 道徳をお説きになるとは! ああそうなんだな、あまりに高潔すぎていらっしゃる! 今から俺はきっちり三分間笑わせて貰うよ、時計で計ってな!」
この皮肉に込められた残酷さを彼は意識していたのであろうか? ひとつ確かなことは、マダム・ダルジュレはまっすぐ立っていることが出来なかった。それほどこの一撃は堪えたのだ。可哀想な彼女はすべてを予想できていたのだが、この息子の激怒だけは別だった。しかし彼女はこの不面目を逆らうことなく呑み込んだ。そして耐え難い悲しみ滲ませて答えた。
「確かに、あなたに真実を説く資格は私にはないでしょうね……。これからは未来が私に道理を示すとき、あまりに残酷なやり方でないことを願うわ。……今やあなたには資金源はない……職業も持っていない……あなたが飢えを知ることがないよう、パンがないということがどんなに辛いか知ることのないよう天に祈ります」
すでにさっきから、若いウィルキー氏はもはや隠しようのない苛立ちを表に出していたが、この不吉な予言を聞くと彼の怒りに火が点いた。
「ああそんなことは全部、単なる言葉に過ぎないじゃないか! 僕は働くなんてことはしない。そんなことは僕の手に負えないのでね。しかし、不自由な生活をする気は全くない……それだけは、はっきり言っておく。いいですね!」
マダム・ダルジュレは眉一つ動かさなかった。
「それじゃ、どうするつもり?」彼女は冷たく尋ねた。「あなたの意図が理解できないわ」
彼は肩をすくめ、この上なくうんざりしたという調子で言った。
「まだ芝居を続けるつもりですか?この僕を相手に、それは通じないってことは分かってるでしょうに。つまり僕が言いたいのは、貴女だって僕と同じぐらいよく分かってるでしょ、ってことです。僕が飢え死にする? 冗談じゃない! 相続財産があるじゃないですか!」
「どの相続財産?」
「何言ってるんです! 僕の伯父さんのじゃないですか! あなたのお兄さん、ド・シャルース伯爵ですよ……」3.4
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