修道院長とその他に女の人がもう一人、そして荷物の世話をしてくれる二人の運搬人が私を待っていました。その女の人はお針子さんで、私の新しい環境に合う服の手配をしてくれる人でした。これはド・シャルース伯爵の配慮であったと後で聞かされました。伯爵はすべてに気を配り、どんな小さなことも軽視することがありませんでした。ご自分は三十人もの召使に囲まれておいでなのに。
というわけで私は生まれて初めて絹の感触やカシミヤの柔らかさを知ったのでした……。手袋も初めて嵌めてみようとしました……みようとした、と言いますのは私、ちゃんと嵌めたことがないのです」
こう言いながら、彼女は何の衒いもなく可愛らしく形の良い手を動かして見せた。その手はちょうどよい大きさで丸みを帯び、ふくよかで白く、爪は真珠のような光沢を持っていた。
このまるで伯爵夫人のような手、彫刻家を羨ましがらせるような手がかつて卑しい労働に従事したなどということが可能なのだろうか、と治安判事は訝しく思った。
「私の身ごしらえはちょっとした騒ぎでした」彼女は困ったような微笑を浮かべながら話を続けた。「シスターたちが皆私の周りに集まって私を綺麗にしようと一生懸命辛抱強く努力してくれました。まるでお祭りの日にマリア様を飾り立てるように。私の中では、彼女たちのやり方は間違っている、という密かな声が聞こえました。これはやりすぎだ、私を滑稽なまでに飾り立てている、と……。でも私は一言も言わず彼女たちの好きなようにさせておきました。私は私で恐ろしく胸の締め付けられるような思いを味わっていたのです。陽気な気分を盛り上げようとなされていることが、こんなに悲しく思えたのはかつてないことでした。
私はグルロー夫人の涙をまだ自分の手の上に感じていました。この賑やかな身支度は死者に施す死に化粧のように不吉なものに思えました……。ついに彼女たちは出来栄えに満足し、私の周囲に称賛の歓声が上がりました。これほど見事なものは見たことがない、と彼女たちは言っていました。教室で勉強していた子も裁縫作業をしていた子も呼び集められ、どう思うか聞かれました。一番賢い孤児たちまでも見に来るよう呼ばれました……。この子たちにとって私はお手本となり、ここで為になる忠告を与える良い機会とみなされたのでしょう、修道院長が全員に向かってこう言いました。
『よく見ておきなさい、子供たち、良い行いを積めばどんな風になれるかを。だから私たちのマルグリットのように賢く生きるのです。そうすれば神様がこのように報いてくださるのです……』
私は晴れやかな装身具の下で、包帯でぐるぐる巻きにされたミイラのように身を固くして、両腕を身体から離し、恐怖のために顔を蒼ざめさせ待っていました。ド・シャルース伯爵を。孤児院の持つ権限を彼の権限に置き換えるべく、すべての手続きを終えた後私を迎えに来る筈の彼を。やがて一時の鐘が鳴り、伯爵が現れました……。
確かに彼でした。私がちらりと見た、私の記憶に留められた彼の姿です。あの私を震え上がらせた横柄な冷淡さと、何を考えているのか分からない目を持った人でした……。彼は私をちらりとも見ようとしませんでした。私は鋭い不安を抱きながら彼を見ていましたが、その顔には称賛も非難も現れてはいませんでした。4.9
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