◎12片の皮を縫い合わせたボール
(2012-11-23)
パイドンの続き。
まず、魂は不死にして不滅でハデス=死の世界においても存在を続ける。基本線はこうだが、ハデスでは地獄に落ちて輪廻転生サイクルに戻ってこない者がいるのも認めているので、事実上砕霊のようなものがあるのも認めているようにも読める。
パイドンは、ソクラテスの死の直前の説教なのだが、人間の魂は死の世界にあっても永劫不滅なのだから、積善陰徳が肝心ということで、その場の聴衆に合わせた話を開陳しているように思う。いわゆる高弟向けの秘儀ではない。
ソクラテスは、その話の延長として、我々の世界の上方にある世界としての真の大地=地球ロゴスを描写する。霊界上層の大地ということなのだと思うが、真の大地を上方から見れば12片の皮を縫い合わせたボールのようだという。サッカーボールは切頂20面体だが、正12面体なら正五角形12枚である。ここで五行、五大が発想され、物質の原理として登場するのだろう。
この大地に特徴的なのは、その美しさである。あらゆるものがこの世のものならぬ美しさで、大地全体が鮮明で純粋な色彩を持ち、目を見張るばかりな紺碧、黄金色、雪よりも白い白亜など、様々な色であり、その上にある花々、果実も華やかな色彩を持つ。そして石ころは皆宝石である。紅玉、緑玉、碧玉などの宝石でない石はなく、金銀なども地をおおっている。
そして大地の上には穴もあり、穴のひとつには地獄タルタロスもある。
法華経の見宝塔品にも、釈迦が、清浄な世界を見せてくれたら、そこは地面が瑠璃で、木が宝石で、黄金の縄で道を区切っていたなどと、ゴージャス霊界の描写があるが、それと同様である。
なぜこんな贅沢セレブの国訪問みたいな話を聞かされなければならないのか、それは単なる夢物語ではないのか、と大悟する前の日蓮みたいな感想を持たれる人もいるのではないか。
この話の基本は上層部霊界の話であって、ソクラテスは、霊魂は不滅だから因縁を浄化するために善行を行い悪事を行わないようにすべきだという、カルマ・ヨーガ推進のネタの一つとして使っている。
ソクラテスもこのゴージャス世界の住人の寿命は長いが永遠ではないとしているので、明らかにこれは霊界のことであって、第六身体の不壊の世界のことではない。
つまり、ソクラテスの美麗霊界の描写は、覚醒や大悟そのものが万人の問題となっている現代に比べれば、のんびりした時代だった聴衆向けの説法だったように思えるのである。