1.十牛図の考え方
十牛図解説本を読むと、とにかく禅の坊さんが書くものだから、いきなり、牛は『本来の自己』とか『本来の面目』のことなどと書かれるので、何のことやら、早速さっぱりわからなくなるものだ。本を買ってきた手前、一応最後まで読むのだけれど、なんとなくわからないで終わるのが多いのではあるまいか。
十牛図は、人と牛の出会いの物語である。人は自分であり、牛は仏(神、宇宙意識、なにもかもなし)である。
作者は、12世紀後半の中国北宋の廓庵禅師で、禅の基礎的な手引として使われてきたが、心理学者のユングやOSHOバグワンも注目しているもの。
今の日本では、きちんと見性(窮極なるものをちらっと見ること)したと思われる坊さんでも、十牛図の三番目の『見牛』段階の方がせいぜいと思われるので、なかなか八番目の『人牛倶忘』すなわち窮極と一体化した体験を持つ人に出会うことは難しいと思う。よくインドからグル(師匠)が来日するが、三番目の『見牛』レベルの人が結構いるように聞く。もっとも『見牛』レベルでもなかなか行けるものではなく、十分に冥想の先生が務まるレベルだが。