◎刀を用いずして人を殺し、刀を用いて人を活かす
(2017-09-01)
太阿記訓読の続き。
『夫れ通達の人は、刀を用いずして人を殺し、刀を用いて人を活かす。殺すを要さば即ち殺し、活かすを要さば即ち活かす。殺々三昧、活々三昧也。
是非を見ずして能く是非を見、分別を作さずして能く分別を作す。
水を踏むこと地の如く、地を踏むこと水の如し。
若しこの自由を得れば、尽(じん)大地の人、他を如何ともせず、悉く同侶を絶す』
通達の人は兵法の達人のこと。刀を用いずして人を殺し、刀を用いて人を活かすとは、天意のままに生きることではあるが、個人のさかしらな欲望が残っていては、殺々三昧、活々三昧にはならない。
その点を説明しないで、『是非を見ずして能く是非を見る自由』と唱えるのはわかりにくいが、すでに自分はないという鏡の境地にあって言えるのだろうと思う。
ここにアダムカドモンなる、完全無欠の原人間(尽(じん)大地の人)が誕生した。天上天下唯我独尊となる。