◎天下に比類なき名剣
(2017-09-15)
太阿記訓読の続き。
『這箇を得んと欲すれば、行住坐臥、語裡黙裡、茶裡飯裡、工夫を怠らず、急に眼を着けて、窮め去り、窮め来たって、直ちに見るべし。
月積み年久しくして、自然暗裡に灯を得るが如きに相似たり。
無師の智を得、無作の妙用を発す。
正にその時、只、尋常の中を出でず、しかも尋常の外に超出す。
これを名付けて太阿という。』
これを得ようと思うのならば、一瞬の気のゆるみもなく、目を見張って、しゃべっている時も、黙っている時も、食事の時もお茶の時も、様々に努力を積んでから、出会うことができる。
暗夜に道を歩いているところで、パっと燈火を見るのに似ている。この時師匠なき智慧を得、作為でない行動(神意、天意)が起きる。
その時、今此処でありながら今此処の外に超出する。これを太阿と名付ける。太阿は天下に比類なき名剣の名。
沢庵は、大悟した人そのものが、天意を履んだ行為をすることを太阿なる天下の名剣に例えている。その名剣は、人と天の中間の天の浮橋のようなものではある。
ただし『師匠なき智慧を得云々』というくだりは、彼が本当に大悟したかどうか怪しいと思わせる部分である。