◎チベット死者の書とニルヴァーナのプロセスとテクニック
(2013-10-31)
七つの身体論の輪郭について触れることのできる基本的な文書が2種類ある。一つはチベット死者の書であり、もう一つは、「ニルヴァーナのプロセスとテクニック/ダンテス・ダイジ」である。
チベット死者の書では、人間の一生の終わりである死を題材にしている。人間の死から再生までの中有を含めた段取りが一歩一歩順序良く描かれており、人間のまとう身体の種類と登場する順番の概要を知ることができる。そして何よりも原初の光なる窮極に如何にワンタッチしていくかを、常に忘れずにトライすべきことが気配りされている。
これに対して「ニルヴァーナのプロセスとテクニック」では、通常の誰にでも起こる死を題材に採るのではなく、ある特殊な冥想技法により、肉体死を意図的に発生させ、エーテル体宇宙を飛び出し、アストラル体宇宙を突破し、メンタル体宇宙をも超え、コーザル体をも振り捨て、世界が一つであるアートマンに入り、それすらも越えモクシャ、ニルヴァーナなる中心太陽に突入する。そしてその体験とはいえない体験の後、なんと個生命・個人として帰還してくるという七つの身体総まくりなエピソードが展開されている。
七つの身体を総覧する記述は残念ながらウパニシャッドにはなく、上昇というキーワードや微細身(エーテル体、アストラル体、メンタル体)は、ばらばらに散りばめられているが、全体の印象をつかめるというほどではない。
明治から昭和にかけての大クンダリーニ・ヨーギと言えば出口王仁三郎で、意図的な死の修行を6度も繰り返し、必ずやエッセンス中のエッセンスを把握していたに違いない。だが、時代的な背景もあるせいか、また教団が神を知る手段として最初のうち憑依・神懸などの技法を中心に据えていたせいか、ニルヴァーナである無我には言及されているものの、七つの身体の構造的な理解にはあまり関心が向けられなかったようだ。